キャスターの堀潤が伊豆大島へ…土砂災害から9年、復興の最中に見たものとは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、キャスターの堀潤が土砂災害から9年が経った伊豆大島の現状、復興状況を現地から伝えました。

◆今なお3人が行方不明…伊豆大島土砂災害から9年が経過

2013年10月16日、台風の影響で伊豆大島の大島町では大規模な土砂災害が発生。流れ込んだ土砂や倒木が町を襲い36人が死亡。今も3人が行方不明のままとなっています。

今回、伊豆大島に降り立った堀は、災害で大きな被害を被った神達地区へ。そこは2021年に「大島町メモリアル公園」へと生まれ変わり、慰霊碑が建立。慰霊碑を前に、「鎮魂のための公園ができたことで気持ちを落ち着かせ、あの日の災害を繰り返さないための教訓をどう伝えていくのか。そうした拠点にもなっている」と語ります。

大島町では災害の翌年から被災者の生活再建支援や地域基盤、インフラの復旧など10年間にわたる復興計画を作成。それから9年の年月が経ち、現在はどのような状況で、どんな課題があるのか。堀は大島町の三辻利弘町長に話を伺いました。

復興計画は2023(令和5)年度が最終年度となっているものの、「コロナ禍で延長せざるをえない状況」と三辻町長。

三辻町長には復興状況について「生活再建」、「インフラの復旧」、「災害から強い地域を作るための産業支援」、そして「防災に強いまちづくり」の4項目を評価してもらいましたが、まだまだ道半ばの項目が散見。

現状について三辻町長は、「それなりに防災対策・復興計画は進んできたが、まだまだ一部終わっていないところがある」とし、「今後も引き続き取り組んでいきます」と力を込めます。

そして、本当の意味で復興を果たすためにどんなまちづくりをしていくべきなのかを問うと「まずは産業振興を充実しなければ」と三辻町長。島民の一人ひとりが豊かになることで人口減少や少子高齢化にも歯止めにも結びつくと考え、「まずは住民生活を一番に考えて、進めていかなければと思っています」と話していました。

町長の話を聞いた堀は、「今年も線状降水帯が発生し、一部で土砂崩れが発生した。すぐ近くの山にも今なお土嚢(どのう)が積み上げられている場所がある。この10年間で環境が変わり、コロナが発生し、毎年のようにさまざまな災害と向き合うなかで復興を続けていくためには、そもそも壊れても生活が再建できる、そのための産業が必要だという話」と町長の話を理解しつつ、「ただ、その産業づくりに関しては少子高齢化のなか、いかに町として再興していくか、まだまだ課題が残っている」と案じます。

◆被災者が胸中を吐露「神様に叱られたと感じた」

この日は地域の方々の今の思いを知るべく、堀は被災者の清水勝子さんにインタビュー。清水さんは当時、「ホテル椿園」の女将として切り盛りしていましたが被災。「今はもう再建を諦め、今後どうしようかなというのが課題。なかなか自分だけの力では難しいと実感しています」と復興の大変さを語ります。

清水さんは現在、災害のこと、さらには地域の文化を伝える語り部としての活動も行っており、それは全て町のためであり、減災を考えてのこと。地域の継続を願い、日々過ごしていると思いの丈を語ります。

そして、島外の人々に向けては「全国からたくさんの支援をいただき、本当に感謝しておりますので、その恩返しができたら」とお礼を述べつつ、「たくさんの方に災害について知っていただいて、自分ごととして考えていただけたら」と清水さん。

幼少期に大火災に遭い、その後も三原山の噴火や地震、そして土砂災害と幾度となく大変な経験をしてきた清水さんは、災害を"自分ごと”として捉えることで「防災につながっていくと思う」と語ります。また、「伝えていく」、「備える」ことも大切で「災害が多い時代においては、行動していかないといけない時代になっていると実感しているので、じっとしているだけでは駄目」と訴えます。

風光明媚な伊豆大島は、自然との共生も重要です。しかし、清水さんは「やっぱり自然は厳しい、年々災害や自然が厳しくなっているのを感じている」と改めて畏怖。事実、今年8月も線状降水帯が発生し、人生で最も激しい雷を体験したと言い「人間が作り上げた社会と自然がいかに向き合い、生活していかなければいけないのか災害を経験して感じた。土砂災害を見て、神様に叱られたと感じた。人間が作っていくハード、それから人間が行動していることが気象を変えているんじゃないか、そんなふうに感じてしまって…」と振り返っていました。

伊豆大島の現状、そして自然を感じ、被災者の方々と触れ合った堀は「災害復旧というのは単にインフラを復旧させ、それでフェーズが終わりというものではない」と率直な感想を吐露。現在、伊豆大島では新たな再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みへの模索が始まっており、「災害に強いまちづくりというのは新しい産業にも関わってくる」とまとめていました。

清水さんの言葉を受けて、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、「人間の経済活動が自然に大きな影響を与えていることが可視化されているなか、私たちが変わらないといけないんじゃないかという問いかけはすごく重く感じた」と述べます。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、メンタルヘルスケアの観点から「9年で被災者のトラウマが解消されるかといえば難しいところもあると思う。メンタルの支援も含め、復興支援という形で行われれば」と望みます。

また、株式会社ABABA代表の久保駿貴さんも「自然は美しい姿を見せてくれるが、時に猛威を振るうこともある。今年の静岡豪雨でも普通の状態ではなかったですし、想定外のことが起こることを意識していくことが減災などにつながると思う」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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