カネカ責任、改めて追及 カネミ油症・被害者全国集会 次世代など全面救済訴え

(写真上から)被害者の高齢化について発言する旭梶山英臣会長(中央)ら=五島市役所 、次世代被害者として複雑な心情を語る下田恵さん=長崎大環境科学部

 1968年に発覚したカネミ油症事件の被害者、支援者らの集会が12日、全国5会場(五島、長崎、東京、兵庫、福岡)をオンラインで結んで開催。被害者救済法成立から10年がたったことを踏まえ、子や孫の次世代を含む全面救済と、原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)の製造企業カネカの社会的責任を改めて追及していくことを確認した。
 同事件は、原因企業カネミ倉庫が食用油を製造する過程でPCBが混入し一部がダイオキシン類に変化するなどして発生。PCBを同社に販売したカネカは87年の最高裁での和解で責任がないと認められ、被害者救済に応じていない。
 集会は計約70人が参加。東京の保田行雄弁護士は、訴訟当時は想定外だった次世代に健康影響が及んでいる実態などから「カネカは当時の和解内容を口実に逃げることはできない」と指摘。次世代の公的な健康影響調査の結果がまとまる来夏が節目とみて、「カネカへの対応を決める必要がある」と述べた。
 救済法成立から10年の現状や課題についても意見交換。五島会場の旭梶山英臣・カネミ油症被害者五島市の会会長は「この4年で会員は40人以上減り、高齢化していく中で、厳しい活動だ」と発言した。長崎会場では次世代被害者で未認定の下田恵さん(33)=諫早市=が多くの症状を抱えている現状を説明。「ダイオキシン類の血中濃度を基にしている現在の認定制度を見直してほしい」と訴えた。
 長崎会場で見学した長崎大環境科学部3年の岡山純音さん(21)は「被害者を認定、未認定と差別し続ける限り問題は終わらない。改善してほしい」と話した。
 集会に先立ち、兵庫会場の高砂市では、参加者がカネカ高砂工業所前で製造責任を訴え、救済の枠組みに加わるよう文書で申し入れた。


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