トヨタGR010ハイブリッドで女性ドライバーが初走行。新人最速はプジョー9X8の19歳/WECルーキーテスト

 11月13日、WEC世界耐久選手権の最終戦翌日に、恒例の『ルーキーテスト』が行われた。

 シリーズが推薦する4人の選手のひとりである、女性ドライバーのリル・ワドゥがトヨタGR010ハイブリッドを初ドライブしたほか、今回積極的に新人を登用しているプジョー陣営からエントリーしたマルテ・ヤコブセンが、ルーキーの中でのトップタイムをマークしている。

■「ハイブリッドに慣れるのに時間がかかった」とワドゥ

 WECのルーキーテストでは、目立った成績や印象的な走りをしたドライバーがシリーズからの推薦を受け、WECにエントリーする4クラスから各1台の車両をドライブする機会が与えられる。今年、この機会を与えられたのは上位クラスから順に、リル・ワドゥ、ドリアーヌ・パン、ロレンツォ・コロンボ、フィン・ゲアジッツの4名だ。

 このほか、WECのスポーティング規則の範囲内で、各チームがシリーズ外のさまざまなドライバーを起用することが可能となっていることに加え、すでにシーズンに参戦しているドライバーがステアリングを握ることもできるようになっている。昨年はトヨタがWRC王者のセバスチャン・オジエを起用し、話題を呼んだ。

 テスト前日に更新されたエントリーリストには、最終的に4クラス21台の車両が記載された。

WECが発表したルーキーテストの選抜ドライバー

 午前2時間、午後3時間にわたってバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われた2回のセッションを通じ、実際にタイムを計測したのは合計45名。

 ドライバー別ベストタイムを見てみると、最速タイムを出したのはトヨタGAZOO Racing7号車GR010ハイブリッドをドライブした、ホセ・マリア・ロペスだった。レギュラードライバーのロペスが出したこの1分48秒812というタイムが、ハイパーカークラスにおけるひとつの基準となった。

 ハイパーカークラスではワドゥのほか、プジョー・トタルエナジーズから3名のルーキーがエントリーしたが、このなかでの最速タイムをマークしたのは、94号車プジョー9X8をドライブしたマルテ・ヤコブセンだった。ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでLMP3チャンピオンに輝いたばかりの彼は、55周を走り、1分50秒222を記録している。

プジョーからルーキーテストに参加し、新人最速タイムを記録したマルテ・ヤコブセン

 ヤコブセンはデンマーク籍の19歳。プジョーからは FIAフォーミュラE世界選手権のドライバーであるマキシミリアン・ギュンターと、プジョーのシムドライバーを務める2度のFIA WTCR王者ヤン・エイラッシャーもプジョー9X8で走行したが、ヤコブセンのタイムを上回ることはできなかった。

 今季LMP2のリシャール・ミル・レーシングチームからWECに参戦していたワドゥは、午前のセッションでトヨタ8号車を33周にわたってドライブし、1分50秒953という自己ベストを記録している。これは、ギュンターおよびエイラッシャーを上回るタイムであった。なお、ワドゥは午後のセッションではLMGTEアマクラスのフェラーリにも乗り込んでいる。

 ハイパーカーのドライブを終え、ワドゥは「GR010ハイブリッドの速さは印象的だった」とWEC公式サイトにコメントしている。

「LMP2マシンとは重さが違うし、ドライビングも違うから。今回のテストでは多くのことを学んだ。とくハイブリッド・システムは私にとって非常に新しいもので、慣れるのに時間がかかった。このような車を運転することは私にとって夢であり、将来はハイパーカーでレースをしてみたい」

8号車トヨタGR010ハイブリッドをドライブする機会が与えられたリル・ワドゥと、レギュラードライバーのセバスチャン・ブエミ
リル・ワドゥの名前も入れられた8号車GR010ハイブリッド

 LMP2クラスからエントリーしたルーキードライバーのなかでは、ユナイテッド・オートスポーツ23号車オレカ07・ギブソンのガーネット・パターソンが最速となった。

 パターソンはFIA F2ドライバーのオリ・コルドウェルや、ジュニア・オープンホイールドライバーのフレデリック・ルビンらを上回ることとなった。

 WEC推薦ドライバーのパンは、LMP2チャンピオンである38号車のJOTAオレカで31周し、パターソンにコンマ2秒差まで迫るベストタイムを叩き出している。

 LMP2クラスの全体最速タイムを出したのは、ランボルギーニ・ワールドファイナルズ・プロの新チャンピオンであるネルソン・ピケJr.だった。ピケJr.はユナイテッドの22号車を駆り、土曜日のバーレーン8時間でGTEプロクラス初優勝を果たしたフェラーリ・ファクトリー・ドライバーのアントニオ・フオコを抑えてクラス最速となった。

 LMGTEプロでは、WEC推薦ドライバーのコロンボが駆るAFコルセ52号車フェラーリ488 GTE Evoが首位に。コルベット・レーシングの64号車シボレーコルベットC8.Rをドライブしたアクシル・ジェフリーズは、わずか0.001秒及ばすに終わっている。

 LMGTEアマクラスでは、マキシム・ウーステンがチーム・プロジェクト1の46号車ポルシェ911 RSR-19でルーキー最速を記録。ゲアジッツのほか、インディ・ドンティエ、パトリック・ギャラガー、ライアン・ハードウィックなど多くのドライバーがさまざまなマシンで周回を重ねました。

 午後のセッションは序盤に2度の赤旗中断があった。アルガルベ・プロ・レーシング45号車オレカがコース上でストップしたためであった。また、ユナイテッド・オートスポーツ23号車のヤセル・シャヒンも、午前中のセッションでストップしている。

2022年WECルーキーテスト ドライバー別ベストタイム一覧(※PDFが開きます)

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