鎌田義孝監督「答えを出せないから撮りたかった」――嘱託殺人未遂事件がモチーフの映画「TOCKA」札幌で先行上映!

実際に起きたある嘱託殺人未遂事件をモチーフに企画・制作された映画「TOCKA[タスカー]」が、11月18日から北海道・札幌の映画館「サツゲキ」で先行公開。2023年2月18日から東京・ユーロスペースほか全国で順次公開される。出演は金子清文、菜葉菜、佐野弘樹。解禁されたポスタービジュアルと、鎌田義孝監督のコメントを紹介する。

北海道・オホーツク海沿岸の国境の町・根室。ロシア人相手の中古電器店を営む谷川章二(金子)には、「死にたい」理由があった。自死ではなく「殺されたい」と願う谷川は、シンガーの夢を諦め、生きる意味を失った女性・本田早紀(菜葉菜)と、先の見えない生活に疲れていた廃品回収業の青年・大久保幸人(佐野)と出会う。谷川の事情を知った2人は、希望をかなえようとある計画を立てる──。

本作は、死を決意した男が、自分を殺してくれる人を探す彷徨(ほうこう)の旅を描く人間ドラマ。3人はそれぞれの過去を見つめながら、男の死に向き合っていく。男は望みをかなえられるのか? 日常と非日常の間で翻弄(ほんろう)される人間の運命の残酷さ、滑稽さ、切なさ、そして「生」のためのささやかな希望を感じさせる骨太な映画といえそうだ。なお、タイトルの「TOCKA」とは、ロシア語で「憂鬱」「郷愁」「憂愁」「絶望」などを意味し、その反意として「憧れ」「いまだ見ぬものへの魂の探求」などの解釈があるという。監督は、「YUMENO ユメノ」以来、17年ぶりに長編映画に挑んだ北海道・名寄出身の鎌田義孝氏。撮影は21年10月下旬~11月上旬に根室、釧路、室蘭で行われた。

【鎌田義孝監督 コメント】

企画を考え始めたのは2006年頃。きっかけは二つの事件でした。一つは東京都中央区の中古電気販売の社長が、ネットで出会った少年に自らの殺害を託すが、未遂に終わった嘱託殺人事件。もう一つ、同じ頃、韓国で起きた同様の事件。依頼したサラリーマンは、青年に殺害され目的を果たした。この紙一重の差は何なのか? “本人の意志を受けて、他者がその人を殺すこと”=“人間の命を最後に自由にすること”。その是非に自分は答えを出せなかった。だから撮りたかった。

今、世界が長寿社会へ進む中、血縁の無い者同士が、命の終わり方を考えることは非常に重要なことだと思う。俺もおっさんだ。友も親父も死んだ。そして2022年、ゴダールが“自殺幇助で死んだ”という事実が、突き刺さる。

私が生まれ育った北海道はアジアの辺境地。ロシア、中国、アメリカ、日本に翻弄され続けている特殊なエリアだ。ここから世界に発信したい。映画「TOCKA[タスカー]」が、1人でも多くの人の心に届きますよう願っています。

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