【特集】ヤギとヒツジを放牧し荒廃農地対策 動物たちを通して地域の人々の交流も 岡山・赤磐市

岡山県は農作物が作られておらず荒れてしまった農地、荒廃農地の面積が全国で9番目に広い県で管理が課題となっています。そうした荒れた農地にヤギやヒツジを放牧して増やさないようにするユニークな取り組みを行っている集落があります。

のんびりと草をはむヤギやヒツジたち。ここは赤磐市の山あいにある岡地区です。

岡地区では高齢化などで農作業が行われなくなった農地を保全しようと、2009年からヤギの放牧を始めました。放牧を管理する地元組合の実盛忠義さんは、毎日、ヤギやヒツジの世話をしています。

(岡中山間地域振興組合/実盛忠義 組合長)
「棚田になっているので、管理をされる人が高齢化してなかなかいないというのが事実です」

放牧は、岡山県などからの交付金を活用して始めたもので、現在は、国の中山間地域等直接支払制度の支援を受けています。

最初は、農地を鉄の柵で囲ったり、夜眠るための小屋を設置したりして、ヤギ4頭を放ちました。しかし、ヤギは斜面を好む習性があることから、翌年からは、ヤギに加えて平地にある田んぼや畑にヒツジ5頭を放牧しました。

(岡中山間地域振興組合/実盛忠義 組合長)
「(田畑の)あぜとか(草を)食べてもらうので、年に1回、草刈りをするぐらいで助かっております」

ヤギやヒツジの放牧の効果があったことから、現在では放牧地を3カ所に増やしています。

(岡中山間地域振興組合/実盛忠義 組合長)
「(Q.ここはこのヤギが食べたのですか?)そうですね。このヤギが1頭だけです。これ3年か4年、刈っていないですから。(記者:すごくきれいになっていますね)そうそう、きれいに食べています。これオスなので非常にたくさん食べます」

岡山県によりますと、2020年の県内の荒廃農地の面積は1万1269ヘクタール、後楽園の約850倍の広さです。全国でも9番目です。

(岡山県農村振興課/佐藤明宏 主幹)
「そもそも(荒廃農地が)発生する原因としましては、地域の農業者の高齢化であったり、農業として作りにくい田んぼ、例えば傾斜地であるとか、池から水が来なくなってしまったようなところから発生するような傾向」

農地に人の手が入らず荒れてしまうと、イノシシやシカなどの有害鳥獣のすみかになったり、廃棄物の不法投棄の誘発などにつながる危険性があるということです。

県では、市町村や農業委員会などの団体と連携して、荒廃農地が発生しないように取り組んでいます。

最近ではブドウの栽培など、荒廃農地を活用する新規就農者への支援も増えているということです。

(岡山県農村振興課/佐藤明宏 主幹)
「まず第一に発生させない。荒廃農地を発生させないということを目標に掲げています。一度荒廃してしまうと、再生させるのに何倍もの労力がかかりますので、まずは発生させない」

いち早く荒廃農地の対策に取り組んでいる岡地区では、地域の人々の交流というメリットも生まれました。

(記者リポート)
「こちらの工房では、地元の人たちが放牧しているヒツジの毛を刈って、カーディガンなどのニット製品を作っています」

刈った羊毛を洗い綿状にしていきます。そして丁寧に糸を紡いでいきます。全て手作業です。やり方は他の地域などに研修に出向き一から学びました。作った製品は地元の熊山英国庭園などでのイベントで販売も行っています。

(地域の人は―)
「ふわふわでとっても暖かくて、この時季にはいいです。糸を作ったら、その糸からセーター編んだり、帽子編んだりいろんなものができます。何にでもなります」

(岡中山間地域振興組合/実盛忠義 組合長)
「ヤギとかヒツジで皆さん心が癒やされるということがあります。餌をやってもらったりということで皆さんは触れ合っていただくということになっています」

© 株式会社瀬戸内海放送