米国調査に見る、サステナビリティに関心のある消費者とのコミュニケーションを強化する方法

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サステナビリティに関するブランド調査を毎年行う米広告代理店「WE Communications(ウィ・コミュニケーションズ)」は9月、全米の18歳以上の成人2462人を対象にオムニバス調査を実施した。調査から分かったのは、若い世代は自らが社会や環境にもたらす影響、お気に入りの企業・ブランドがもたらす影響に関する実用的な情報を求めており、より持続可能な世界を実現するために自らのスキルを高めたいと考えているということだ。さらに、回答者のなかでも若い世代、女性、有色人種に該当する人たちは、企業・ブランドの行動が気候変動の解決策の一つになることを期待している。ウィ社のシャンテル・アダムス氏が、調査をもとにこうした層へのコミュニケーションを強化する上で重要な3つの視点を紹介する。([^undefined]今回の調査では、数値を加重平均しており、米国の成人を代表する数値と捉えている)

シャンテル・アダムス
EVP, Consumer
WE Communications

1、消費者が求める情報を理解し、溝を埋める

多くの企業がサステナビリティやネットゼロの実現に向けて膨大なリソースを投じ、自治体や政府と連携し、より持続可能な未来への転換が全ての人にとって公平なものになるよう取り組んでいる。しかし残念なことに、消費者の多くはこうした動きを知らない。
ウィ社の調査によると、今回調査の回答者の70%は、働いている企業がサステナビリティの目標の達成に取り組んでいるかどうかを知らないと答えていることが分かった。さらに76%は、サステナビリティ目標の達成に向けて進捗管理を行うサステナビリティ担当の責任者が自社にいるかどうかも把握していないという。

企業・ブランドが、若い女性や有色人種に対して、サステナビリティ目標の達成に向けた進捗を共有することはとりわけ重要だ。今回の調査で、サステナビリティに関する課題に最も深く関わっている若い女性や有色人種は、確固たる目標を掲げ、定期的に進捗を共有する企業を信頼する傾向があることが分かった。

こうした層とコミュニケーションをとるには、強力なソーシャルメディア戦略が不可欠だ。調査会社Statistaによると、米国のZ世代の77%、ミレニアル世代の72%は少なくとも週に1回はニュースや情報を得るためにソーシャルメディアを見るという。この事実は企業・ブランドにとって一つの課題でもある。ソーシャルメディアは事実より楽しさを好む傾向があるからだ。入念な調査に裏付けられたCNNのニュースもほんのわずかの間にTikTokで誤った情報に上塗りされる。だからこそ企業・ブランドは独自のチャンネルを使って、興味をそそる正確なストーリーを伝えるよう努めなければならない。

2、消費者の知識欲を満たす

多くの人々は、気候変動を食い止めるために意義のある行動をとらなければならないことを理解している。米国の成人の59%がこのことが最優先事項であると回答している。しかし、われわれの行動、もしくは行動しないことによる影響を受けて生きていく若い世代は気候変動への関心が非常に高い。若者の67%が気候変動を最大の関心事であると回答している。実際に、若者の気候変動への懸念は非常に強く、心理学者によって「エコ不安(eco-anxiety)」という言葉が発せられるほどだ。気候変動への不安から起きるストレスについて、生徒にカウンセリングを提供する大学も増えている。

今回の調査では、若い有色人種の女性、高学歴の女性がとりわけ気候変動に注目しており、自らの選択が地球にどのような影響をもたらすかということへの意識が高まっていることも分かった。こうしたグループの人たちは企業・ブランドに対しても同じく高い基準を求めている。例えば、Z世代の有色人種の女性の69%が「ブランドは気候変動問題を解決する重要な役割を担っている」と答えた。一方、調査者全体では56%がそう回答した。

こうしたグループの人たちは情報と知識を求めており、食や買い物、休暇、利用するテクノロジーなど自らの選択が環境に与える影響についてさらに学びたいと考えている。そして、自らや周囲の人々に影響をもたらす環境政策にどう影響を与えられるかを知りたいと願っている。企業・ブランドにとっては、より良い選択を手助けするためにこうした人たちを巻き込み、連携し、そして自社が責任を果たしていることを証明する絶好のチャンスといえる。

3、STEMからSTEMSへ

米国では過去20年間、私立であれ公立であれ、幼稚園から高校3年生までの間にSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の教育を強化・推進するという潮流があった。STEM教育は、若い人たちが成功し、貢献するための能力を身に付けるためのものだ。しかし今やそこに「サステナビリティ(S)」を追加し、STEMSにしなければならない。若い人々、特に有色人種の若い女性は一般の人よりもサステナビリティに関連する仕事に関心を持つ割合が増えている。

さらに若者、特に有色人種の若者は、そうした仕事にチャンスを見出している。上の世代と異なり、米国の若い世代の多くは持続可能な社会の実現につながる“グリーン”な仕事が、すでにそうした仕事に就いている人の数よりも多くあることを認識している。だからこそ、今回の調査回答者は、高校でグリーンな職業につくための技能研修を行うことに賛同している。企業・ブランドはこうした教育分野に投資を行い、社会に入る前の学生たちと繋がりを持つことで、優秀な人材と関係を築き、未来のリーダーたちと連携していける。

次世代のリーダーたちはサステナビリティへの関心が高く、すべての人にとってより良い未来をつくるために具体的かつ現実的な取り組みを行っている。同時に、企業・ブランドには、こうした重要なステークホルダーと連携し、より持続可能な未来を実現するチャンスがある。

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