敵地・日本での勝利はヒョンデにとって重要とヌービル「2023年に向けて必要な後押し」/ラリージャパン

 ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)は、11月10~13日に愛知県と岐阜県で開催されたWRC世界ラリー選手権第13戦『ラリージャパン』において、自身とチームメイトのオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)がワン・ツー・フィニッシュを決めたことは、ヒョンデ・モータースポーツにとって必要な後押しだったと述べた。

 2010年以来、12年ぶりの開催となったWRC日本ラウンドで優勝を飾ったヌービルは、自身の今季2勝目がチャンピオンシップには影響しない、“単なる勝利”であることを認めた。しかし、マニュファクチャラー選手権においてTOYOTA GAZOO Racing WRTに次ぐランキング2位となったヒョンデにとっては、それ以上の意味があったと言う。

 ダニ・ソルドが駆るヒョンデi20 Nラリー1の全焼や、相次いだクラッシュ、一般車両のコース侵入などさまざまな要因によって、とくに序盤にステージキャンセルが続いたラリージャパンの前半戦。ヌービルはその最中に上位に進出を果たすと、デイ2終了時にはトップと僅差の2番手となる。翌日のデイ3ではエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)との首位争いでリードを奪った。

 迎えた日曜のラリー最終日には、エバンスがパンクによって遅れたためセーフティマージンを得て独走状態に。終盤の雨にも翻弄されることなくトップでフィニッシュし今シーズンの自身2勝目、チームにとっては年間5度目となる勝利を持ち帰った。

「僕自身にとっては、それはひとつの勝利にすぎない」とヌービルは『WRC.com』に語った。

「しかしチームにとって、またワークショップとオフィスで1年中働いているすべての人や、イベントに来られない人たちにとって、それは大きな成果だと思っている」

「そこに秘密はない。ラリーで勝つということは、最初から最後まですべてがうまくいった週末ということだ。そうでなければラリーでは勝てない。いつもそうなんだ」

「『トヨタに勝つために日本へ行く』という期待に、皆が興奮していた。そして最終的には本当に大きな勝利になった」

「今年の後半はたしかに少し強くなった。僕たちはより良い結果、より多くのポディウムを獲得した。ここ日本でダブル表彰台を達成したことは、2023年に向けて良いブーストになった」と彼は付け加えた。

リエゾンを走行するヒョンデi20 Nラリー1(ティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組) 2022年WRC第13戦ラリージャパン

■シーズン初期は大苦戦。「勝てる位置に戻ってこられてよかった」

 ヒョンデ・モータースポーツ副代表のジュリアン・モンセは、ヌービルのコメントに同意している。チーム代表代行を務める彼は、ヌービルの総合6位が陣営最上位となった今季開幕戦モンテカルロ以来、チームがここまで成長したことを結果が示していると述べた。

 モンセによれば、当時の状況はシーズン中に1勝するだけでも“大きな成果”と考えるほど苦しいものだったという。

「正直なところ、年明け後すぐの頃はどこかでひとつ勝つだけでも大きな成果だった思う。それがいま、私たちは5回の優勝を数えた。この結果は間違いなく誇りと喜びを感じられるものだ」

「ここ日本でトヨタに勝てたことは、私たちが求めていた特別なモチベーションになったかもしれない。この一戦は特別な味わいだ」

「我々にとって2022年シーズンはもっとも成功したシーズンのひとつだが、チャンピオンシップを獲得できていないというのはちょっとしたパラドックスだ。だが、これまでの困難な時期を考えれば、(この位置に)戻ってこられてよかったと思う」

 マニュファクチャラー選手権でランキング2位、ドライバー選手権ではタナクが2位、ヌービルが3位となったヒョンデは、現在のところ2023年のドライバーラインアップを発表してない。ヌービルが来季もヒョンデi20 Nラリー1を走らせることはほぼ確実であると考えられているが、韓国メーカーからの離脱が明らかになっているオリバー・ソルベルグとタナクの後任ドライバーは未発表のままであり、彼らの去就とあわせてさまざまな憶測がなされている。

ヒョンデ・モータースポーツ副代表のジュリアン・モンセ
WRC最終戦ラリージャパン2022をもって、3年過ごしたヒョンデ・シェル・モビスWRTを離れるオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)

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