2019年に閉場した魚市場と、そこに生きる人々を追うドキュメンタリー 「浦安魚市場のこと」予告

12月17日より劇場公開される映像作家・歌川達人による初の長編ドキュメンタリー映画「浦安魚市場のこと」の、予告編が公開された。

予告編は、サケを鮮やかにさばく魚屋の手つきとともに、「魚屋さんは魚を売っているだけじゃない。私たちは物だけを買っているわけじゃない」という映画監督・纐纈あやの言葉が映し出される映像から始まる。2019年に閉場を迎えた浦安魚市場の最後の日の活気あふれる様子、名残惜しそうな人々の姿が描き出され、後半には映画に登場する魚屋店主でロックバンド「漁港」のボーカルを務める森田釣竿の歌声が流れる中、魚市場や魚市場をめぐる人々の様子が収められている。

「浦安魚市場のこと」は、2019年に閉場を迎えた浦安魚市場と、昼は町の魚屋、夜はロックバンド「漁港」のボーカルとして活動する森田釣竿を始めとする、魚市場をめぐる人々を追ったドキュメンタリー映画。監督は映像作家の歌川達人。これまで主にカンボジアで短編中編のドキュメンタリーを制作してきた歌川にとって、本作が初の長編となる。撮影期間中、歌川は浦安魚市場近くへ移り住んで撮影を重ね、映画製作のほかに写真集や魚市場内での映像インスタレーション展示などを行ってきた。

一足先に本作を鑑賞した著名人のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■栗原友(料理家・築地クリトモ商店)
無くなってから気づく大切さ。大切なものを守るためにやらなければならないこと、やるべきことはその時にならないとわからないものです。日本の魚食需要が回復しつつある今だからこそ、できることはまだまだたくさんあると改めて考えさせられました。

■白央篤司(フードライター)
見終えて「ああ、もう市場はないのだ」とたまらなく寂しかった。行っておきたかったと悔やまれてならなかった。見納めだ、と目頭をおさえた「泉銀」のおかあさんの声に胸を打たれる。森田釣竿さんはじめ、地元有志の方々の熱い思いが心に残る。愛惜という尊くうつくしい気持ちに満ちあふれた98分だった。

■武田砂鉄(ライター)
これまで淡々と繰り返されてきた毎日が、途絶えると知った途端に愛おしくなる。そういう経験を、私たちは何度も何度も繰り返してしまう。この儚さの中に見える力強さを、どうしたら忘れずにいられるのだろう。

■ダースレイダー(ラッパー)
掛け声が飛び交い、身体が波打ち、魚が飛び跳ね、リズミカルに包丁が動き、金銭が飛び交い、笑い声が起きる。魚市場にはエネルギーがドクンドクン脈打っている。このエネルギーが途絶えたら人は衰退するしかないのではないか? シャッターが降りる前に、魚を食え!

■浜岡賢次(漫画『浦安鉄筋家族』シリーズ作者)
浦安魚市場はたまに鰻などを買いに行っていました。本作の人情味あふれる場面を見てもっと行っとけば良かったと思いました。今度移転して続けてる泉銀さんや他のお店屋さんに行ってみます!

■森直人(映画評論家)
森田釣竿のチャーミングな個性とカリスマ性に引っ張られるうち、いつしか涙。これは日本の水産業の危機的側面や、固有の魚食文化、グローバリズムとローカリズムといった主題を抉りつつ、何より「場」の大切さについて考えさせられる一本である。

【作品情報】
浦安魚市場のこと
2022年12月17日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開予定
配給:Song River Production

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