寺田総務相に辞任論「大臣に逃げ道なし」 止まぬ野党追及、話せば話すほど状況悪化

国会議事堂(資料写真)

 閣僚の「ドミノ辞任」を狙う野党の追及がやまない。16日の参院審議では寺田稔総務相が自身の政治資金を巡る“脱税疑惑”を再びただされて防戦一方となった。来週からは補正予算案の審議が始まり、NHKのテレビ生中継も入る。与党内からは「国会答弁や記者会見を担う大臣に逃げ道はない。まともな説明ができない以上は身を処してほしい」(自民幹部)との辞任論が浮上している。

◆「私には激励」漏れる失笑

 「私個人のお金を後援会を通じて取り次いだだけです」。総務相は昨年総選挙における選挙運動関係の支払いを後援会が行ったとされる疑惑を釈明した。公職選挙法では選挙運動に関わる支出を第三者となる後援会に担わすことを禁止している。立憲民主党の小西洋之氏による「違反」との批判を「資金を取り次いだだけ」として否定したのだ。

 総務官僚出身で選挙事務も担当していたという小西氏は「総務省で働いた者として、法律の抜け道を認めて実践するような大臣は許せない」と激怒。立民の熊谷裕人氏は「来年は統一地方選だが、地方議員はこれまでの答弁にがっかりしていると思う。問題と無関係などと繰り返すなら大臣を辞すべきだ」と求めたが、総務相は「関係ないとは言っておらず早急に訂正手続きを促す」と答弁し、野党席からは「しょせんは人ごとか」とヤジが飛んだ。

 小・中・高校を寺田氏の地元である広島で過ごした共産党の井上哲士氏は「広島の知人らは地元選出の政治資金所管大臣による今回の不祥事を嘆いている」とただしたが、総務相は「私のところへは多くの激励をいただいている」と反論。委員席から失笑が漏れた。

◆週明けまでに首相決断?

 同日の参院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会は衆院定数「10増10減」が審議事項。違う院の身分に関することでもあり参院としては議論しづらいテーマだったが、「野党はこれ幸いとばかりに議題を外れて寺田大臣を責め立てた」(自民議員)。ただ、与党委員席からは「議題以外のことを聞くな」との援護のヤジはほとんど飛ばず、あきらめムードも漂った。

 総務相の後援会を巡っては会計責任者が故人であることが判明したほか、代表として記載されていた男性が「自分は違う」と否定したと報道されており、政府の公安関係者は「故人の遺族や男性が告訴すれば事件化しかねない」と懸念する。寺田氏の辞任論に拍車がかかるゆえんだ。

 自民の閣僚経験者は「大臣は週2回の閣議後会見などで国民への説明責任を負う。寺田大臣は話せば話すほど状況を悪くしている」と指摘。「19日に帰国する岸田文雄首相は週明けまでに更迭を決断するのではないか。それができなければさらに混乱が広がる」と予測した。

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