「入社33年でこんなこと初めて」名物広報も悲鳴 台風の影響で全線復旧のめど立たずも…前を向く“ローカル線”大井川鉄道のいま【現場から、】

SLや「きかんしゃトーマス号」で人気の大井川鉄道がいま、大きなピンチを迎えています。台風15号で甚大な被害を受けてからまもなく2か月、全線運転再開のめどはいまだ立っていません。それでも、前を向く大鉄の今をみつめました。

夜の川根路をゆっくりと進む大井川鉄道井川線。毎年、冬の時期に走る特別ダイヤ「星空列車」が今年も始まりました。川根本町の千頭駅から1時間ほどで奥大井湖上駅に到着、乗客は、澄んだ空気の中のんびりと星空を楽しみます。

<乗客>

「初めて乗ったんですけどすごく楽しかった。子どもとの思い出になった」

この季節、日中は紅葉が楽しめ、観光客に人気の井川線。しかし、その一方で…

<大井川鉄道広報 山本豊福さん>

「今回大井川本線で一番ひどかった福用の土砂崩れ現場。大井川本線で20か所の土砂崩れがあって自分も入社して33年経つんですがこんなに大きな規模の災害は初めて」

台風15号の大雨によって起きた土砂崩れなどの影響で、金谷駅と千頭駅を結ぶ大井川本線はおよそ2か月止まったまま。本来なら紅葉シーズン、多くの乗客でにぎわうはずの新金谷の駅もこのありさまです。

<孫と駅に来た人>

「動いていなくて残念。乗せてやりたかった」

全線の復旧を急ぎたい大井川鉄道ですが、一筋縄ではいきません。

<篠原大和記者>

「川根本町の下泉です。あちらの鉄道橋ですが、いまだに大量の流木がそのままになっています。線路を超える高さまで積みあがっています」

災害が起き、路線に被害が出た場合、大井川鉄道が自ら復旧作業を行います。しかし、今回被災したのは、大井川本線だけで20か所。この過去に類を見ない被害の多さが復旧の妨げとなっているのです。

金谷駅から家山駅までの間は懸命な作業のおかげで、12月16日から運行を再開します。しかし、その先、全線復旧のめどはいまだ立っていません。

<川根本町 薗田靖邦町長>

「各市町のみなさん、連携していただければと」

<静岡県 川勝平太知事>

「なんとか鉄道の再生を図りたい。大井川鉄道は財産ですので。できる限りの支援を国からも得たい」

11月行われた知事と市や町のトップによるサミットの場でも鉄道復旧の問題が話題に上りました。大井川鉄道は静岡県や沿線自治体の力を借りて、地域の観光と住民の交通手段を守りたい考えです。

新金谷駅で11月12日から始まった電車の運転体験です。運休で使われていない駅と車両を生かして、ファンに楽しんでもらおうと大井川鉄道がいまの状況を逆手に取ったイベントを企画しました。

<大井川鉄道広報 山本豊福さん>

「みなさんに笑顔と楽しさを提供するのが(大井川鉄道の)存在する意味だと思う。やっぱり電車が久しぶりに動いている姿はすごくいい」

一日もはやく元の姿で楽しさを届けたい。小さな鉄道会社は苦境の中でも地域を盛り上げ、一歩ずつ前に進んでいます。

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