これってエモさの塊? プリンセス プリンセス「LOVERS」胸キュンアルバムの金字塔!  プリプリの5人が書いた10篇のラブソング

世界でいちばん熱かったプリンセス プリンセス

1989年のプリンセス プリンセス(以下、プリプリ)の人気は、今でも鮮明に思い出せるほど衝撃的でした。前年にリリースされたシングル「GET CRAZY!」がドラマ主題歌に抜擢され、数々の歌番組にも出演していましたが、当時中学生だった私の友人たちの認知度は低いものでした。しかし、この年の4月に発売された「Diamonds」と、7月に発売された「世界でいちばん熱い夏」の2枚のシングルで、クラスの雰囲気が大きく変わります。

「え? 去年まで知らなかったし、興味も無かったよね!?」

こんな風に友人たちにツッコミを入れたくなるほど、周囲がどんどんと “プリプリ” のファンになっていく様子は圧巻でした。そして勢いそのままに、その年の暮れには4枚目のオリジナルアルバム『LOVERS』を発表します。このアルバムで、人気は不動のものとなり、女子のファンを一気に増やすことになります。

すべてがラブソング。未発表オリジナル10曲を収録した「LOVERS」

『LOVERS』は、1989年11月17日に発売されたプリプリ4枚目のオリジナルアルバムです。プロデュースは、河合マイケル&笹路正徳。

プリプリは、このアルバム以前、5人で出すロックなバンドサウンドを意識し、楽曲を制作してきました。しかし、本作ではライブでの再現を意識しないアレンジを行うことで、バラエティーに富んだ楽曲が揃うことになりました。同年リリースされ、大ブレイクのきっかけになった「Diamonds」、も「世界でいちばん熱い夏」も収録しない、未発表オリジナル曲10曲という大胆な構成で発表されました。

本人たちが出演した、ソニー・オーディオカセットテープのCMに使われた「パレードしようよ」や、本木雅弘主演、周防正行監督作品『ファンシィダンス』の主題歌となった「恋に落ちたら」など、テレビから耳にする楽曲も多く、初登場で1位を獲得。リリースと同時に爆発的なセールスを記録しました。

この作品は、そのタイトルに相応しく「ラブソング」しか収録されていません。メンバー5人が、作詞、作曲をさまざまに組み合わせ担当し、10通りの恋愛模様が繰り広げられます。プリプリはこれまでガールズバンドならではの勢いや元気さのイメージが強かったバンドですが、このアルバムでは極めて “ナチュラル” なメンバーの表情が描かれています。日常で経験している感情が素直に楽曲に反映されています。

『LOVERS』は、2人で朝を迎えた主人公。結ばれる未来を確信している、壮大なオープニングナンバー「ムーンライト ストーリー」で幕を開けます。そして、2曲目に収録された「友達のまま」は、前作『LET‘S GET CRAZY』に収録された名バラード「M」と同じ失恋ソングです。しかし、引き摺るよりも、“友達” としての関係を選んだ切ない片恋ソングとして、プリプリの不動の人気曲となりました。そんな今まで聴いた事が無い “乙女なプリプリ” に多くの人が魅了されました。

本作の魅力はサウンド面だけではありません。ヴィジュアルの凝り方でもファンを魅了しました。

CDの初回出荷分は、メインのモノクロのジャケットとは真逆のイメージで内側はサーモンピンクを基調とした、バインダーのような、ノートのような不思議なパッケージになっています。写真のような光沢に映された歌詞カードは、便箋に書かれた綺麗なキチンとした文字や、丸文字の手書きのものでした。まさに、見た目も中身もまさに、プリプリからファンへのプレゼントでした。

ガールズバンドの金字塔、多くの乙女に刺さった「LOVERS」

当時のクラスメイトを思い出してみると、特に女子は、このアルバムを貸し借りし合ったりせずにクリスマスプレゼントや、お年玉で購入していきました。気づけば、学級委員長や、ヤンキーっぽい子。ジャニーズが大好きな子や、漫画にしか興味が無かった子まで『LOVERS』を買って聴いていました。私の身近なところ以外でも、恋愛真っ最中だった方や、失恋を経験した大人の恋を経験した人も、多くの乙女に刺さったアルバムでした。

好きな曲を作ると自然とラブソングになる女の子5人が、持ち寄った10篇のストーリーは、カッコ良さと共に、親しみやすさも感じました。ロックでも胸がキュンとさせられるガールズバンドの金字塔『LOVERS』。

今のようなサブスクや、SNS時代では、直接「好き」を伝えるラブソングが溢れている中で、Z世代の人が、このアルバムを聴いたらどういう感情が芽生えるんだろう。今でいう “エモさ” の塊のような作品に “胸キュン” してくれるはず。リアタイ世代の方が聴き直すと、錆びついてしまった “恋愛モード” のスイッチがオンになるかもしれないので、ご注意を!

カタリベ: 林ともひと

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