東京都でパートナーシップ宣誓制度が運用開始…LGBT当事者が語る現実と望む未来とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“LGBT当事者の未来”をテーマに、キャスターの田中陽南が取材しました。

◆当事者が語る、まだまだ絶えない性的マイノリティへの差別

10月11日、東京都で「パートナーシップ宣誓制度」の受付が始まり、11月1日から運用がスタートしました。これは互いを人生のパートナーとして尊重し、協力し合うことを宣誓したふたりに都が証明書を発行するもので、発行されると都営住宅への入居や子どもの名前を証明書に記載することが可能に。都内で生活する性的マイノリティのカップルにとって、これはとても大きな意味を持つ出来事だと言えます。

多様性が認められる社会に向け、順調に進んでいるように思えますが、果たして当事者はどう捉えているのか。今回、田中は「パートナーシップ宣誓制度」の申請と同時に記者会見を行った山本そよかさん・ヨリコさんカップルを取材。

会見では「ずっと願ってきたパートナーシップ制度を一緒に東京都で申請できたことを、嬉しく思います」と思わず感極まる場面もあった山本さん。制度の運用に伴う今後の展望に関して、「会社にパートナーがちゃんと家族として捉えられて、もしパートナーやパートナーの家族に何かあったときに、ちゃんと支えてあげられるように休みが取れたり、理解してもらえるのかなというのはすごく思っている」と話し、とてもポジティブに捉えている様子。

ヨリコさんも「今まで説明が必要だったことが証明書を見せれば『そうなんですね』となるのは気持ち的に楽」と見解を示します。しかし、できないこともまだまだ多く、問題が山積しているのも現状で、山本さんは「性的マイノリティとして生きていく上で生きづらさが解消されることがゴールだと考えていて、平等に扱われていないことや、差別的な扱いを受けるような人間なんだみたいな感じがするのが嫌だなという思いがある」と胸中を吐露。日常生活において、差別的な扱いを受けていると感じることは多々あると言います。

◆LGBTの方々が望む未来に向けて…一人ひとりのやさしさが重要

ふたりの出会いは大学生時代。アメリカで出会い、それぞれ帰国した後に交際がスタート。当時のことについて山本さんは「なんとなくお互いそうなのかなと、女性も好きなのかなって気づいていた」と振り返ります。両者ともに性別を気にすることなく、過去には男性と付き合っていたこともあり、好きになる人の性別については「特に限らない」と語ります。

これまで何度もメディアに取り上げられ、その関係をオープンにしているふたりですが、それでも今の日本社会では堂々とできない瞬間があると言います。手を繋ぐにも「たまに勇気がいる瞬間もある」とヨリコさん。山本さんも「手を繋ぎたいときは繋ぐようにしているんですけど、繋ぎづらいときはある」と同意。例えば、電車などで子どもがいると躊躇してしまうようで、そんな自身の経験から「男性カップルのほうが余計(人前で手を)繋ぎづらいのではないか」と慮る場面も。

こうしたさまざまな生きづらさの解消を望むふたりですが、そのカギとなるのは「一人ひとりのやさしさ」と山本さん。「ひとりの力って本当に大きくて、みなさんは自分にできることはなんだろうって思うかもしれないけれど、ひとりそういう勇気をくれる人がいれば、人の人生って変わるので、みなさんそうやって接してくれたら嬉しい」と思いを語ります。

ヨリコさんも「今はまだ社会的に認知がされていなくて『LGBTです』って言わなきゃいけないタイミングだと思っているんですけど、左利きの人が『私左利きです』って言わなくても制度が整っていて、左利き用のハサミがあるのと同じような感じでLGBTでも普通に何も主張せず、みんなと同じように結婚でき、家族も持てるのがいいなと思います」と理想を語っていました。

◆今後、より良い社会にしていくためには?

東京では、まずは自治体でパートナーシップ条例が始まり、理解が広がったことで今回のパートナーシップ宣誓制度の運用にまでこぎつけました。キャスターの堀潤は、これまで活動してきた方々に対し「本当に頭が下がる思い」と敬意を表します。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんも、運動を牽引し頑張ってきた人がいるからこそ制度ができたことに対して感謝しつつ、婚姻制度を含めまだ日本では実現していない部分がたくさんあるとし、「それぞれが自分の立場、自分事として考え、(生きづらさを感じないような世の中に)変わっていくといいなと思う」と望みます。

株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは、パートナーシップ宣誓制度について「やって当たり前のこと」と強調。まだ実現していない自治体に向け「すでに運用され、ルールがあるので、(導入している自治体から)そのノウハウを学び、早急にやらないといけない」と訴えます。

ただ、地域間格差があり、今回も東京だからこそできた部分もあるという側面も。堀は、「子どもたちが自分の性自認の問題などに関して、いろいろな人たちと共有できる場があるかといえば、なかなかない。SNSで探して繋がったり、学校で孤立したりすることもある。その格差をどうやって埋めていくのかということも考えたい」と言及。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「国会議員などが国としてルールを作っていくことで日本全体としてルールメイクできるところもあると思う。そこは国の仕事として頑張ってほしい」と期待します。

番組Twitterには、視聴者から「マイナカードを推し進めていく国が、幸せの多様性を認めようとしないなんておかしい」とのツイートが寄せられ、堀は「婚姻制度に関しても今の戸籍制度に則って照らし合わせると現状の同性婚などに関する問題もあるが、そもそも個人に番号が振られていたら戸籍制度の問題はクリアしながらいろいろできそうですよねっていう指摘だと思う」と解釈。

能條さんも「割り当てられた性別と戸籍などが行政部署によるのが、しっくりきていなかったり、違うと思っていたりする人もいるなかで、パートナーシップ制度がそこに縛られずに使えるというところではメリットはあると思う」と言い、その上で平等な結婚や制度の活用に対し「本来は両方の選択肢があるなかで、みんなが選べるようになれば」と望んでいました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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