都市部はオレオレ、地方は架空請求… ニセ電話詐欺 長崎県警の捜査員に実情聞く

ニセ電話詐欺の主な手口、だまし取る主な方法(型)

 昨年を上回るペースで増えるニセ電話詐欺被害。長崎県警は精力的に捜査しているが、容疑者逮捕につながるのは毎年10~20件前後(今年は10月末時点で13件)。犯行グループの多くは闇の中だ。2002年から捜査に携わる県警組織犯罪対策課の担当者(48)に実情を聞いた。
 警視庁は、特殊詐欺(ニセ電話詐欺)について▽オレオレ▽架空料金請求▽還付金-など10のカテゴリーに分類。だまし取る方法としては主に▽振り込み▽送付▽手交▽電子マネーの四つが知られる。
 「昔は『振り込め詐欺』という言葉は存在せず、『身近な知能犯罪』と呼んでいた」。この道20年の担当者は述懐する。オレオレ詐欺が台頭したのが02年。架空請求、融資保証金、還付金-と手口が広がり、06年に総称して「振り込め詐欺」と名付けられた。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 ■高止まり

 警察は金融機関と連携。口座凍結、払い出し金額の上限設定などの対策を打ち出し、被害件数は減少に転じた。しかしその後、金融商品、交際あっせんなど新たな手口が出現。いたちごっこは続き、過去最悪だった14年ほどではないものの被害発生件数は高止まり状態。「今はオレオレなど、昔ながらの手口の方が増えている」と担当者。
 担当者によると、詐欺の手口には地域差があるのだという。「都市部はオレオレ、地方は架空請求が多い」。都市部に犯行グループの拠点が置かれる場合が多く、移動しやすい関東周辺では「手交」が、地方では「電子マネー」が目立つ。
 新型コロナ禍は、接触型の手交をさせにくくする“効果”をもたらしたが、コロナが常態化し再び発生の兆しも。さらに担当者は意外なことも口にした。「西九州新幹線が開業し『受け子』が長崎に来るようになる可能性がある」。祝賀ムードの陰で県警は警戒を強める。

 ■しっぽ切り

 暴力団員や半グレなどの「首魁(しゅかい)」を頂点に、ピラミッド状の組織を形成する犯行グループ。「受け子など末端はお金のない若い男の子が多い」と担当者。末端は上層部の名前や顔さえ知らないケースがほとんどで、警察が摘発してもトカゲのしっぽ切りで終わることが少なくない。
 担当者は、昨年、諫早市の80代女性が、名義貸しを巡るトラブルの示談金名目で1億円以上をだまし取られた事件が強く印象に残っている。受け子は和歌山県内で逮捕され公判中だ。「被害者に落ち度はなく、金額以上の苦しみを味わっている。それをやわらげるためにも、捜査に全力を尽くす」。担当者はそう口調を強めた。


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