10増10減

 ある物事を決めるのに、10万人の有権者から選ばれた議員3人が賛成し、50万人から選ばれた議員1人が反対した。多数決では、3対1で賛成派の意見が通るのだが、抱える有権者の数では30万人対50万人、3対5になる▲これが果たして民意の反映といえるのかどうか? ごく簡単に言えば「1票の格差」とは、こうした民意の不平等な扱いを巡る問題といえる▲国会議員1人に対する有権者の数に、選挙区によって差がありすぎる-と、最高裁は2009年の衆院選を「違憲状態」とした。それなのに「1票の格差」はさらに広がるありさまで、12年、14年の衆院選も「違憲状態」とされた▲いくらか堅い言い回しをすれば「立法府が民主主義を置き去りにしてきた」のと同じだが、格差はとりあえず、次の衆院選で縮まっていく。衆院小選挙区を「10増10減」とする改正公選法があすにも成立する▲ご存じの通り、長崎は「10減」のうちの一つで、定数が4から3になる。「民意の不平等」は正すべきだとしても「地方の声が届きにくくなる」という不安の声は強い▲それをどう和らげ、地方の民意をどう反映させるのか。1票の格差を縮めることで、また新しい宿題が生まれる。いささか気が早いが、「1減」となる小選挙区の議員さんの責任は、ますます重い。(徹)

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