あごが痛い、口が開かない…20~30代女性に多い顎関節症とは 症状や原因、治し方を専門家が解説

顎関節症の主な症状と原因、予防法

 「顎が痛い」「口が開かない」「顎を動かすと音がする」といった症状のある顎関節症(がくかんせつしょう)。かみ癖や精神的なストレスなどさまざまな要因が相まって発症する。国内で顎関節に何らかの症状がある患者数は約1900万人と推定され、決して人ごとではない。福井県歯科医師会の荻原浩樹・広報担当理事に原因や治療法を聞いた。

原因はかみ合わせの悪さ? 定説では影響少

 顎関節は、肘や膝といった他の関節とは違い、上顎から下顎が靭帯と筋肉によってぶら下がっている。そのため「顎関節はトラブルが起きやすい」(荻原理事)。▽口を開けた時に顎関節や顎を動かす筋肉が痛む▽十分に大きく口を開けられない▽口の開け閉めで顎関節に「カクンカクン」などと音がする―のうち、一つ以上当てはまれば顎関節症の可能性がある。高齢者には少なく、20~30代の女性に多い。

 かつては、かみ合わせの悪さが原因の一つと考えられていたが、影響は少ないというのが定説になっている。左右の歯でかめる状態なのに、歯を削ったり、詰め物を取り換えたりしてかみ合わせを調整することは「初期の顎関節症の治療では行われなくなってきている」。

顎関節症になる原因は…最近注目の「歯列接触癖」とは

 では原因は何か。荻原理事は「一つではなく、さまざまな因子が複合して発症する疾患」と強調する。因子として挙げられるのは、▽顎関節や顎を動かす筋肉が構造的にもともと弱い▽片側でのかみ癖や頬づえをつくなどの習慣がある▽寝ている時に歯ぎしりをする▽特定のスポーツでの強いかみしめや、口でくわえる楽器演奏による顎関節への負担▽精神的ストレス―などさまざまだ。

 また、最近注目されているのが歯列接触癖(TCH Tooth Contacting Habit)だ。人間は通常、安静時に上と下の歯は接触がなく2ミリほどの隙間があり、接触するのは物をかむ時と飲み込む時だけで、接触時間は1日20分ほどと言われている。一方で、口を閉じている時など、物をかむ時と飲み込む時以外にも上下の歯を接触させる癖をTCHという。自覚がないまま上下の歯を長時間にわたって接触させ続けると、顎関節への負荷が加わり、顎関節症の発症や症状の悪化につながる。顎関節症の患者の多くはTCHがあるという。TCHの治療は困難だといい、荻原理事は「日常生活で上下の歯を接触させないように意識するよう指導するようにしている」と話す。

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一般的な治療は「マウスピース」、ストレッチもおすすめ

 顎関節症の一般的な治療では、マウスピースを使う。夜間就寝時に使用し、無意識のかみこみや歯ぎしりで生じる顎関節や筋肉への負担を軽減させる。虫歯や歯の欠損などで、左右でかめない場合は口腔(こうくう)内の環境を整える治療を行う。顎の筋肉のストレッチやマッサージをするのもいい。

 さらに、左右両方でかむことを意識する、片側に加重がかかる癖を直す、ストレスをためない生活を送ることなどが予防につながる。

 「顎関節症が原因で他の疾患を引き起こすことは基本的にはない」という。放置していても自然治癒して日常生活に支障がなくなる場合もあるが、「原因を取り除けば体が勝手に治してくれる病気」。症状が気になり日常生活に支障がある場合は、歯科医院を受診してみては。

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