ランチアのデビュー戦となったWorldRX最終戦、新5冠王者クリストファーソンが年間8勝目を記録

 11月12~13日にドイツ・ニュルブルクリンクで争われた2022年WorldRX世界ラリークロス選手権の最終第10戦は、すでに前戦で自身5度目のドライバーズタイトル獲得を決めている“絶対王者”ヨハン・クリストファーソン(KMS/フォルクスワーゲンRX1e)が、シーズン通算8勝目を獲得。全車条件横並びの電動化初年度でも支配的な1年を象徴する締め括りとなった。

 開幕戦以降、ここまでダブルヘッダーが続いてきた新世代の電動最高峰クラス“RX1e”は、ここニュルの最終戦でひさびさ1発勝負の週末に回帰した。そのレースウイークを前に話題をさらったのは、約1年前にプロジェクトを公表していたGCKモータースポーツの復帰参戦で、最新の電動キットを搭載したアイコニックなイタリアの“ホットハッチ”が復活。伝説の『ランチア・デルタ・インテグラーレ』をベースとする『ランチア・デルタEvo-e RX』がついに競技デビューを飾る日を迎えた。

「チャンピオンシップに最後に出場してから1年以上が経過したが、こうしてWorldRXに戻ってくることができて本当に興奮している」と語ったのは、フランスに拠点を構えるGCKモータースポーツ代表であり、今回デルタのステアリングを握ったゲラン・シシェリ。

「ひとつ確かなことは、僕らの『ランチア・デルタEvo-e RX』は、この超壮観なシリーズで戦う最新鋭のモダンなクルマたちのなかでも、群を抜いて際立っているということだね」と、新型機の仕上がりに満足げなシシェリ。

「GCKパフォーマンスが過去9カ月にわたって素晴らしい仕事をしてきたことを祝福しなければならない。製造品質と仕上げのレベルはどちらも信じられないほどだ。この新生ランチアが多くの人々に感銘を与えることは間違いないだろうね! ただクルマに慣れて競争力を高めるには明らかに少しの時間が必要だが、今はただコースに出たいと思っているよ」

 こうして始まった今季最終戦の土曜は、最初のプラクティスから0.008秒差でティミー・ハンセン(ハンセン・ワールドRXチーム/プジョー208 RX1e)を打ち負かしたクリストファーソンが、スーパーポール・シュートアウトでその差を0.8差にまで拡大。その後、ヒート2ではコーナーカットによる5秒ペナルティを課されたものの、中間ランキング首位で初日を終えることとなった。

伝説の『ランチア・デルタ・インテグラーレ』をベースとする『ランチア・デルタEvo-e RX』がついに競技デビューを飾る日を迎えた
「この超壮観なシリーズで戦う最新鋭のモダンなクルマたちのなかでも、群を抜いて際立っている」とGCK Motorsport代表のゲラン・シシェリ
土曜ヒート2ではケビン・ハンセン(Hansen World RX Team/Peugeot 208 RX1e)と絡み、バリアへの衝突で早々に初日を終えることに

■「スーパーポールでの最速が今週末の最大の目標のひとつだった」とクリストファーソン

「もちろん(ペナルティは)今季のハイライトではなかったね(笑)。(降雪に見舞われた)昨年と比べてトラックは大きく異なる。完全に乾いている状況でのクルマの速さには驚いたし、至るところでサイドウェイのアクションが繰り広げられた」と、改めて良好な条件下で500kWのパワーを満喫した33歳の新チャンピオン。

「スーパーポールでの最速が今週末の最大の目標のひとつだった。ここでは最前列からスタートしないと非常にトリッキーな事態に陥る。最終ヒートに向けいくつか改善を行うことができたし、明日に向けては良い兆候だね」

 明けた日曜13時過ぎのプログレッションから再開された勝負は、セミファイナル1でケビン・ハンセン(ハンセン・ワールドRXチーム/プジョー208 RX1e)を順当に撃破したクリストファーソンが、ハンセン・ブラザーズを従えてインサイドの最前列から年間ファイナルのヒートへ。

 決勝でも慌ただしい最初の数コーナーを首位で抜けた後、疑いの余地なく後続の追跡者を適切に引き離した5冠王者は、そのまま2.5秒以上のギャップを築いてチェッカーフラッグを奪い、悠々キャリア通算35勝目でフィナーレを飾った。

「とても良い週末だった。僕らKMSのチームは1年を通して完璧なクルマを届けてくれたし、今季達成したすべての勝利は、忠実なパートナーとパッケージ全体をゼロから組み立てた、このプロジェクトに関与するすべての人のためのものだ」と、自らのファミリーチームとスタッフ全員に賛辞を送ったクリストファーソン。

「信頼できるクルマを作ってくれて、それが僕にプッシュする自信を与えてくれるとき、僕は完全に自分の仕事に集中することができる。チーム選手権の表彰台を父と共有できたのはとてもいい気分だった。ラリークロスのイベントで一緒に表彰台に上がってから数年が経ったが、前回は彼がドライブしていたときだったから、それは僕ら家族が一生共有する思い出になるだろうね」

 一方、2位でフィニッシュしたケビンはレース後の車検で車両の規定違反が発覚してリザルト除外処分となり、代わってコンストラクション・イクイップメント・ディーラーチーム(CEディーラーチーム)から参戦のニクラス・グロンホルム(PWR RX1e)と兄ティミーのトップ3に。

 そして話題を集めた“デルタ・インテグラーレの生まれ変わり”こと『ランチア・デルタEvo-e RX』は、土曜ヒート1でケビンのプジョーと絡んで早々に初日を終えると、日曜セミファイナル2では縁石の激しい衝撃でサスペンションを壊し、ファイナル進出のスピードがあることを証明しつつも、ほろ苦いデビュー戦となった。

ファイナルでは、ヨハン・クリストファーソン(KMS/Volkswagen RX1e)がハンセン・ブラザーズを従え、インサイドの最前列から首位を守る
「今季達成したすべての勝利は、忠実なパートナーとパッケージ全体をゼロから組み立てた、このプロジェクトに関与するすべての人のためのものだ」とクリストファーソン
日曜の『ランチア・デルタEvo-e RX』も、縁石の激しい衝撃でサスペンションを壊し、ほろ苦いデビュー戦となった

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