浪費癖があり貯蓄が苦手な50代夫婦「余裕のある老後を送りたいけど不安になってきた」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、56歳、会社員の女性。若い頃から浪費癖が治らず、貯蓄が苦手だという相談者。家計をチェックしたFPが指摘する「今すぐやったほうがいいこと」とは? FPの氏家祥美氏がお答えします。


私56歳、夫57歳、共に会社員です。

若い時から割と収入が高かったため、浪費癖がついておりなかなか貯蓄が出来ていません。ボーナスは今まで、子どもたちの学費や旅行、税金、毎月の赤字埋め合わせ等でほとんど貯金出来ていませんでした。

住宅ローンの繰上げ返済も当初の予定通りには出来ておらず、今になって、老後この調子ではいけないと思い始めました。学費の支払いがなくなった3年前くらいからiDeCoやつみたてNISAを始めました。

少し余裕のある老後の生活を送りたいとは思っていますが、このままで大丈夫なのか不安になります。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、56歳、会社員

・夫:57歳、会社員

・子ども:上の子は結婚、下の子は24歳最近退職して現在無職

・住居の形態:持ち家(戸建て、関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:夫45万円、妻13万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円

・毎月の世帯の支出の目安:38万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:7万円

・水道光熱費:3万円

・保険料:県民共済8,000円、積み立て生命保険2万2,000円

・通信費:2万3,000円(放送視聴料含む)

・車両費:2万円

・お小遣い:夫4万5,000円、私1万5,000円

・その他:4万円(医療費、習い事、娯楽費)

・毎月の貯蓄額:2万円

【資産状況】

・現在の貯蓄総額:300万円

・現在の投資総額:REIT200万円、株150万円、つみたてNISA 150万円、iDeCo私50万円、確定拠出年金320万円、持株会積み立て月2万円・ボーナス5万円

・現在の負債総額:住宅ローン残債950万円(63歳まで)、車両150万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・老後資金:年金夫65歳から240万円、私80万円。夫の退職金は転職のたあまり期待出来ず、予想500程、私退職金無し

氏家:一度ついた浪費癖は、かなり意識しないと元に戻すのは難しいもの。ブランド物のように目に付く贅沢をしていない場合はなおさらです。ふわふわっとお金を使っているご相談者さんですが、いま意識を変えて本気で家計改善に取り組まないと大変なことになるかも……。

毎月の家計「収入-支出=18万円」は本当?

浪費癖がついてなかなか貯蓄ができていないということですね。たしかに家計を拝見すると、大きな落とし穴があることに気が付きます。

現在は上のお子さんが独立されて、ご夫婦と下のお子さんの3人暮らしをしています。1か月の手取り収入は夫45万円と妻(本人)13万円の合計58万円あります。

一方、支出は合計で39万3,000円。1か月の収支を内訳と共にまとめるとこのようになります。

【手取り月収】
夫 45万円
妻 13万円
合計 58万円

【月々の支出】
住居費 12万円
食費 7万円
水道光熱費 3万円
保険料 3万円
通信費 2万3,000円
車両費 2万円
お小遣い 6万円
その他 4万円
合計 39万3,000円

【収支】
58万円-39万3,000円=18万7,000円
※このうち、積み立て貯蓄2万円、持株会月2万円

手取り月収が58万円、支出が39万3,000円ということですから、計算上は18万7,000円の黒字になります。支出の外に、貯蓄月2万円、持株会月2万円とあるので、このほかに14万7,000円が残っている計算となります。

この数字がほんとうであれば、18万7,000円×12カ月=224万4,000円。これにボーナスからの貯蓄が上乗せされることになりますが、実際のところはどうなのでしょうか。

手取り200万円あるボーナスのうち170万円は何に使っている?

ボーナスの使い道についても確認していきましょう。

ボーナスは年間で手取り200万円ありますが、ボーナスから決まって使っているものは特になく、30万円を貯蓄に回す以外は、学費や旅行、税金、毎月の赤字埋め合わせ等に使っています。これまでお子さんの教育費などで想定外にまとまった金額が出ていくことはあったかもしれませんが、現在はご相談者さんのお子さんはすでに二人とも卒業しています。その状況でボーナスのうち170万円が使途不明というのは、お金の使い方として問題があります。

月々の家計は18万7,000円の黒字であるにもかかわらず、ボーナスの使い道として「毎月の赤字をボーナスから補填している」と書かれている点も気になりました。月々もボーナスも何にいくら使っているのかわからない状態ということが分かります。

金融資産と負債の確認

現在の金融資産をまとめると以下のようになります。

貯蓄 300万円
REIT 200万円
株 150万円
つみたてNISA 150万円
iDeCo 50万円
確定拠出年金 320万円
持株会 不明(月2万円、ボーナス5万円積立)
金融資産合計 1,170万円

【負債】
住宅ローン 950万円
自動車ローン 150万円
負債合計 1,100万円

金融資産残高と負債がほぼ同じ金額です。貯蓄に株にiDeCoにつみたてNISAといろいろやっていますが、金額的にはまだこれからという状況です。現在、夫57歳、妻56歳ですから、あまり増やす期間もありません。

負債は住宅ローンの残債が950万円で、現在57歳の夫が63歳で完済予定です。現在の住まいは戸建てですから、管理費や修繕積立金は不要と考え、住居費12万円はまるまる住宅ローン返済に充てられると考えられます。月々12万円×12カ月×(63-57)年=864万円で残債950万円に届きませんから、ボーナスからも住宅ローンの返済があるのかもしれませんね。

退職金は夫の500万円のみ。仮に60歳で退職とした場合、60歳時点の住宅ローンの残債を退職金で繰り上げ返済したら、それで終わってしまいます。

何歳で退職予定かわかりませんが、65歳で年金をもらうまでの余裕資金がありませんから、継続雇用や転職などで65歳までは働ける道を探すことをお勧めします。

年金生活に向けて今から家計の引き締めを

65歳からの年金は夫が240万円、妻80万円の予定です。ふたりで年間320万円あるわけですが、これは手取りではありません。ここから税金や社会保険料等が15~20%程度差し引かれるため、手取りは256万円程度と思っておきましょう。月額21万3,000円になります。

現在の月々の家計が39万3,000円。住居費12万円を差し引いても27万3,000円ですから、年金生活に入ったら、さらに毎月6万円を減らさないといけません。

現在の家計では月々39万3,000円使った上に、毎月かなりの金額の使途不明金があります。毎年ボーナスが200万円ありますが、このボーナスにも家計が頼っている状況です。

今スグに家計の見直しを始めて、少しでも65歳以降に使えるお金を残しておきましょう。多少窮屈に感じても、21万3,000円で生活する65歳以降のことを考えたら、蓄えておこうと思えるのではないでしょうか。さらに、60歳以降もできる限り長く働けるように、仕事についても準備を始めておきたいところです。

使途不明金をなくして「ふわっとした家計」の見直しを

ご相談者さんの家計の一番の注意点は「使途不明金」にあります。ご相談者さんの家計内訳を拝見すると、一見無駄がありません。収入に対して支出が少ないため、その数字が本物であれば相当なペースで貯まっていそうなのですが、実際の金融資産残高はそれほどありません。つまり、ご本人が把握している数字は家計の一部にすぎず、それ以外に何に使ったか記憶にも残っていない支出がたくさんあるということになります。

正しく支出を把握することが、貯まる家計への第一歩ということになります。

おそらく、ご相談者さんの家計は、ネットで日用品を買った、ドラッグストアで医薬品と日用品を合わせて買った、習い事に必要な材料を買った、買い物ついでに外食した、物産展で地方の食材を買ったなどが多いのではないでしょうか。

ブランド物や高級レストランのようなわかりやすい贅沢はしておらず、ふわっとした支出、記憶にも残りにくい支出がよその家計よりも多めなのではないでしょうか。

もし心当たりがあるのなら、買い物の度にレシートをもらって振り返る習慣を付けましょう。1か月の記録をとって合計してみると、「いまだけ」と思っている支出が積み重なると大きな金額になっていることに気づくことでしょう。

来年の臨時支出予定表を作成

月々の「ふわっとした支出」だけでなく、年単位の「ふわっとした支出」にも気をつけましょう。毎月あるわけではないけれど1回あたりの金額が大きくなりがちな支出を「臨時支出」と言います。

今年1年のクレジットカード利用明細をまとめてダウンロードし、来年もありそうな支出にマーカーを引いて、合計金額を出していきます。合わせて来年新たに発生しそうな支出があればそれも書き出して加えていきます。

クレジットカード利用明細だけでなく、銀行の預金通帳も参考になります。こちらからは、口座引き落としで支払っている臨時支出が把握できます。

【手順】
1.資料をそろえる
クレジットカード利用明細を1年分ダウンロード、通帳を記帳する。

2.来年もありそうな支出をピックアップ
利用明細や通帳から、来年も引き続きありそうな支出と金額にマーカーを引く。
あわせて来年新たに発生しそうな支出があれば、それも洗い出しておく。

3.一覧に書き出す
来年1月から12月までの一覧表を作成。1か月が1行になるように12行用意して、それぞれの行に、その月の予定、それぞれにかかる費用などを書いていきます。

来年の臨時支出予定表が作成できたら、合計金額を出します。なんとなく家計から出していた金額がまとまると大きな金額になることに驚くことでしょう。記入した臨時支出記入表をもとに、来年は大きな支出もコントロールしていきましょう。

今回のポイントをまとめると

ご相談者さんが老後のために今からすべきことはこの3つになります。

(1) 使途不明金を洗い出して支出を見直す
(2) 来年の臨時支出予定表を作成して、大きな支出をコントロールする
(3) 60歳以降も働ける道を探る

もうあまり時間の余裕がありません。気を引き締めて、ゆとりのある老後に向けて頑張ってください。

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