がん発覚時すでにステージ4「余命1年」に絶望…51歳がんサバイバー、闘病生活を配信し続ける理由

がんの闘病などをユーチューブで発信している坪川由美子さん=福井県坂井市内

 最も進行した「ステージ4」のがんを患い、医師から「余命1年」と宣告された福井県坂井市の坪川由美子さん(51)が、ユーチューブで自身の経験を発信している。「診断されたとき、がんに対して無知で必要以上に落ち込んだ。自分のような思いをしてほしくない」。闘病は1年を超え、現在も抗がん剤治療を受けながら、がんに対して正しい知識を持つ大切さを訴えている。

 坪川さんは2021年4月、仕事中に突然、周りの人の言葉が理解できなくなった。脳腫瘍だった。摘出手術を受け、病理検査の結果、進行した卵巣がんが転移したとみられることが分かった。がんは腹部にも散らばった状態で、医師から「ステージ4b。余命1年」と告げられた。

 旅行やご当地グルメが好きで、婚活アドバイザーとしても活動していた。明るい性格だったが、「頭が真っ白になった。絶望し、泣いてばかりいた。自分が自分でなくなってしまった」。就職したばかりの勤め先も辞めざるを得なかった。

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 離れて暮らす娘が毎日電話をくれ、その励ましを支えに、医師の宣告から3日後にブログを開設。「生きた証しというか、娘に言葉を残したい」。病気や治療のこと、日々の思いをつづった。病気が分かった後、多くのがんサバイバーや専門医の動画に勇気づけられたという。自身もユーチューブで情報を発信しようと、今年9月に「ゆみねー」として配信を始めた。

 「皆さん、かたいけのー。ステージ4がんサバイバーのゆみねーです」。スマートフォンで撮影、編集し、診断の経緯や手術の経過、抗がん剤の副作用などについて、福井弁を交え、分かりやすく紹介している。新型コロナウイルスに感染したときも、宿泊療養施設から配信を続けた。

 チャンネル登録者数は、開設後約2カ月で2千人を超えた。コメント欄には、がんの当事者や家族のリアルな心情がつづられ、交流の場にもなっている。坪川さんは「想像以上の反響でびっくり。がんで悩み、生きづらい思いをしている人たちに元気や勇気を与え、笑顔になってもらえたらうれしい」と笑顔を見せる。

 ユーチューブを通して、自分の存在や人柄を知ってもらい、いずれは全国各地での講演活動につなげたい考えだ。「何度も絶望的な気持ちになったが、何度も奇跡が起きて体を動かせている。自分なりにできることをこれからも続けていきたい」と前を見据える。

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