ミサイル着弾

 ありそうな物語。きっかけは、擦れ違いざまに肩が触れたとか触れないとか-の若い組員2人のトラブルだ。些細ないさかいは兄貴分を巻き込み、やがて組同士の抗争に発展、遂にその炎は双方の上部団体に飛び火して…▲ヤクザ映画の見過ぎと言われそうだ。ただ「オレの舎弟に手を出したのはお前か」とか「ウチの組員にケンカを売るのは、この『代紋』にケンカを売るのと同じ」という論理は、他国に対する攻撃を自国への攻撃と同視する国家間の「集団的自衛権」とよく似ている▲ウクライナの隣国ポーランドにミサイルが着弾、犠牲者が2人出た。ウクライナのゼレンスキー大統領は「自国のミサイルではない」と主張しているが▲当のポーランドも、北大西洋条約機構(NATO)も「ウクライナ軍の迎撃ミサイルである可能性が高い」との見方を崩していない。米大統領も「証拠がない」とゼレンスキー氏の言い分を否定している▲理由ははっきりしている。もしこれが、どこかの国による攻撃だとしたら、NATOは集団的自衛権を発動しなければならない。各者の抑制的な姿勢をひとまず歓迎したい▲集団的自衛権は自衛権の単なる“互助システム”ではなく、戦争の「当事国」の数を一度に増やしてしまう仕組みだ。改めて胸に刻んでおきたい。(智)


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