『シン・ウルトラマン』を旧作ファンが観たら…愛が炸裂してた!西島秀俊の凄みも堪能した

大ヒットを記録した映画『シン・ウルトラマン』は古参ファンのライターが見ても、旧作への愛溢れた演出に感動させられました。また、西島秀俊さんの演技にも注目します。

2022年5月13日に劇場公開され、大ヒットを記録した、空想特撮映画『シン・ウルトラマン』。

監督・樋口真嗣、脚本・庵野秀明によって作り出された本作は、まさに「ウルトラマン」という作品への愛があふれた一種の“ラブレター”のような一本でした。

そんな『シン・ウルトラマン』が11月18日よりAmazonプライムビデオで配信されるということで、本稿では旧作ファンの心をくすぐる演出や西島秀俊さんの演技についてなど、僭越ながら綴らせていただければと思います。

映画『シン・ウルトラマン』公式サイトより

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原作となった『ウルトラマン』とは?

そもそも『シン・ウルトラマン』の原作となっている『ウルトラマン』とは、どんな作品だったのでしょう?

1966年の『ウルトラQ』からスタートした「ウルトラ」シリーズは、その後継番組である『ウルトラマン』より、タイトルに「マン」の二文字を冠するようになり、巨大ヒーローと怪獣たちの激しいバトルを中心とする作品となりました。怪獣退治の専門家チームである科学特捜隊のハヤタ隊員が、上空を調査中に、空に舞う2つの球体を目撃。そのうちの一つと衝突し、命を落としてしまいますが、実はその球体こそが怪獣ベムラーを追っていたウルトラマンでした。ウルトラマンはハヤタと一心同体になることで命を救い、共に凶暴な怪獣たちと戦っていくことになります。それが地球人とウルトラマンの最初の出会いでした。その後、ウルトラマンは地球人たちと幾度も邂逅を遂げ、今なお続く歴史を築いてきたのです。

そして、生誕55周年を迎え、その歴史に新たな1ページが加えられました。それが、庵野秀明氏が製作に携わる『シン・ゴジラ』、『シン・エヴァンゲリオン』に続く、「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」3作目となる空想特撮映画『シン・ウルトラマン』です。

CD『M八七』(米津玄師)

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旧作ファンが喜ぶ演出と現代っぽさを追求した脚本

『シン・ウルトラマン』は、禍威獣(かいじゅう)と名付けられた巨大不明生物が次々と現れる日本を舞台としています。

これに対抗すべく、禍威獣対策のスペシャリストたちが集結した「禍威獣特設対策室」通称「禍特対(カトクタイ)」が設立され、彼らがいかにして禍威獣たちの脅威から国を守ろうかと思案を続ける中で、突如、大気圏外から銀色の巨人が飛来したことで事態が急変。ウルトラマンと名付けられたその巨人は、一体何者なのか…というところから物語が幕を開けます。本作は「ウルトラマン」ファンであれば、絶対に身構えてしまうようなファンの心をくすぐる演出であふれています。

まずタイトルロゴから冒頭にかけての演出が素晴らしく、『ウルトラQ』の楽曲に合わせて、ゴメスやマンモスフラワー、ペギラといった怪獣たちがスクリーン狭しと暴れ回るサプライズにただただ感動させられます。

CD『シン・ウルトラマン音楽集』

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そして、そこから始まる『シン・ウルトラマン』の物語…オリジナルの『ウルトラマン』を下敷きにし、ある程度のストーリーラインは本家のそれなのですが、現代らしいタッチやリアリティを追求した脚本力で新鮮味を大いに与えてきます。かつて成田亨さんがデザインしたウルトラマンを忠実に再現し、カラータイマーを廃したことから、ウルトラマンのラインでエネルギー量を示すアイデアも、今までにないもので面白い。全体的な印象としては、5つの事件で構成され約20分ごとに新たなストーリーへと切り替わる一話完結のオムニバス形式な点が、『ウルトラマン』放送回を数話分繋ぎ合わせた総集編映画のように映るのですが、『ウルトラマン』がどのようなストーリーであるかということを新規ファンに伝える最も早い近道だったようにも思います。

いやむしろ、これほどまでに『ウルトラマン』への愛が炸裂した映画であれば、その辺りも当時の「ウルトラ」映画へのオマージュなのかもしれません。

『ULTRAMAN HISTORICA ウルトラQからシン・ウルトラマンまで』(講談社)

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“実相寺アングル”の多用、『ウルトラマン』という作品が持つ人間の愚かさと美しさを描いたストーリー、『ウルトラマン』オリジナルの楽曲、外星人として表現された不気味な容姿のウルトラマン、現代らしく洗練されたデザインに生まれ変わった外星人や禍威獣の姿など、『ウルトラマン』オリジナルへ最大限の敬意を払い、全く新しい、特撮という偏ったジャンルに囚われない作品を作り出したことに拍手を送りたいです。

まさに本作は、かつて空に光る無数の星々を見上げ、M78星雲に想いを馳せた少年たちが、ウルトラマンへの愛を伝えるために結集し書き上げた、壮大なラブレターであると言えるのです。

異なる作品で「光」と「闇」を演じた西島秀俊の凄さ

最後にキャストについても言及しておきたいところです。

主人公である神永新二役を演じた斎藤工さんやヒロインの浅見弘子役を演じた長澤まさみさんを初めとしたキャストたちは、非常に難しい単語を多く発するセリフを約2時間にわたって喋り続けるというとんでもないお芝居に挑戦したわけですが、中でも注目したい俳優は、やはり禍特対の班長である田村君男役を演じた西島秀俊さんです。西島さんと言えば、今年同じく特撮作品である『仮面ライダーBLACK SUN』で主人公の南光太郎役を演じていたことでも記憶に新しく、「ウルトラマン」「仮面ライダー」の二大特撮作品を制覇したことになるわけですが、その演技は全く異なるものであったのが印象深いです。『シン・ウルトラマン』における西島さんは、禍特対というチームをまとめ上げる班長という立場であることから、絶対的な信頼性と決断力が求められる役どころだったのですが、地球の人々、果てはウルトラマンにとっても「光」とならなければならない役柄の中、見事に存在感ある演技でそれらを体現して魅せたと思います。

映画『シン・ウルトラマン』禍特対PV

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一方の『仮面ライダーBLACK SUN』における西島さんは、幼い頃に改造手術を受けたことで怪人として育てられ、迫害を受ける中でもかつては「五流護六」という団体の中で理想を信じ生きてきた南光太郎という役どころ。創世王を倒すことだけを考える排他的な存在感を放っているのが印象深く、全体的に表情に「影」を落とした演技が強烈なインパクトを残しました。つまり西島さんは、この2022年に出演した2本の特撮作品で、「光」と「影」の双方を体現したと言えるのです。西島さんの演技幅のいわば両極端とも言える演技をぜひとも堪能してもらいたいです。『シン・ウルトラマン』と『仮面ライダーBLACK SUN』を続けて視聴することをおススメしたい!かつて地球に怪獣が現れても、空から別の星の宇宙人が助けにやってくるなんてことはありえない。と誰かが言いました。『シン・ウルトラマン』は、そんな考えを根底からひっくり返すヒロイックな映画なのだと言えるでしょう。(執筆:zash)

映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】

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映画『シン・ウルトラマン』概要

2022年5月13日(金)より公開

出演:

斎藤工 長澤まさみ 有岡大貴 早見あかり 田中哲司

西島秀俊 山本耕史 岩松 了 嶋田久作 益岡 徹 長塚圭史

山崎 一 和田聰宏

企画・脚本:庵野秀明

監督:樋口真嗣

音楽:鷺巣詩郎

製作:円谷プロダクション 東宝 カラー

制作プロダクション:TOHOスタジオ シネバザール

配給:東宝公式サイト : https://shin-ultraman.jp/

公式Twitter:@shin_ultraman(https://twitter.com/shin_ultraman)

米津玄師 「M八七」 ×「シン・ウルトラマン」Kenshi Yonezu- M87 × Shin-Ultraman

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