米海軍横須賀基地の有害物質流出から半年 地元漁師「宝の海を守るために原因究明を」 専門家からも怒りの声

米海軍横須賀基地周辺の海で60年以上漁を続けてきた小松原哲也さん=横須賀市平成町

 米海軍横須賀基地(横須賀市)の排水処理場から人体に有害な有機フッ素化合物「PFOS」「PFOA」が海に流出している問題で、米海軍は排水を浄化するためのフィルターを今月から稼働させた。だが、流出原因は分かっておらず、専門家は「原因を突き止められなければ、根本的な解決にはならない」と指摘。地元の漁師からは「宝の海を守るために原因究明を」と怒りの声が上がっている。

 朝日がまぶしい朝6時前。漁師の小松原哲也さん(80)は新安浦港(同市平成町)を出港すると30分ほどで米軍基地そばの漁場に着いた。

 狙いは高級食材として知られる「ミル貝」。船から空気を送り込むホースの付いた潜水服を着て海に潜り、長い水管を砂から出して生活するミル貝を見つけ、丁寧に採取する。多い日の収穫は40キロにも上る。

 小松原さんは江戸時代から続く漁師の家に生まれ、小学5年生の時から父と一緒に船に乗り、14歳で漁師となった。

 父の教えは「海を大切にすること」。小さな魚や貝は採らないことは当たり前だった。「基地周辺は東京湾内でも珍しい大きな砂地がある宝の海。海を汚す行為は許せない」と米海軍に怒りをあらわにする。

 有機フッ素化合物の流出が問題となったのは、基地内の排水処理場で5月に「特異な泡」が見つかったことが発端だった。米海軍が排水を検査したところ、国が飲み水に定める暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム)の2.24倍(合計値)のPFOS・PFOAが検出された。7月の調査でも同じ数値が検出され、8月は171倍、9月には258倍にまで増えた。

 流出が常態化しているとみた市は9月、排水停止を求めたが、米海軍は「基地内の住民が移転する必要がある」と拒否。排水はそのまま流れ続け、今月1日、米海軍は排水を浄化するための粒状活性炭のフィルターを稼働させた。しかし流出から半年たっても流出源は判明していない。

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