首里城の正殿再建に福井県の宮大工が力…30年前の復元工事も携わった山本信幸さん「前回よりも立派に」

火事で焼ける前の首里城の正殿=2014年8月
山本信幸さん

 焼失から3年がたった首里城(沖縄県那覇市)正殿の再建に向けた起工式が11月3日に現地で行われた。福井県の宮大工も復元工事に携わり、棟梁(とうりょう)には、福井市の社寺設計・施工会社「社寺建(しゃじけん)」の40代の宮大工が就く。同社の山本信幸会長(64)は、30年前の復元工事に副棟梁として携わった自らの経験を踏まえ「前回より立派なものを造りたい。技術の伝承にも取り組みたい」と意欲を見せている。

 首里城は1945年、太平洋戦争末期の沖縄戦で焼失。89年に復元工事が始まり、正殿は琉球独特の宮殿建築で92年に復元された。山本会長は当時、施工管理などを担った。今回の再建工事でも白羽の矢が立ち、社寺建は共同企業体(JV)の下請けとして、木材加工や組み立てなどの木工事を行う。山本会長は10月から沖縄で準備を進めており、福井県から宮大工数人が今後現地入りする。

 現在、技術伝承のため沖縄の宮大工を探している。正殿に対する地元の思いは強く「ぜひ協力したい」と30年前に携わった仲間も見つかったという。現地の宮大工を含め約30人を雇う予定で、2026年の完成までともに汗を流す。

 3年前の焼失直後、福井新聞の取材に「あまりにもショックで言葉を失った。一から復元に携わった人間として少しでも役に立ちたい」と語っていた山本会長。今回は、漆の塗装や瓦ぶき、建具工事、電気設備など再建に関わる幅広い業種と、木工事との調整役を主に担う。「前回は30歳過ぎで若かった。力不足でできなかったこともある。30年前を超えるものを造りたい」と意気込む。この30年間で正殿に関する資料や、文献の解釈が以前より集まっているといい、「新たな知見で一歩進んだ復元ができる」とみている。

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 首里城は2019年10月31日未明に正殿から出火。木造3階建ての正殿など7施設が全焼し、奉神門(ほうしんもん)など2施設の一部が焼けた。漆器などの収蔵品391点が焼失した。内閣府によると、正殿再建費用は約120億円。

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