「ベーゴマ」知ってる? 鋳物の街・川口で「名人」らが教室、小学生に指導 ギネス記録への挑戦視野

ベーゴマ名人たちのお手本を見る子どもたち。手前左から井出祐史さん、菊次哲也さん、中島茂芳さん=12日、埼玉県川口市の安行小学校

 鉄の鋳物で作られたベーゴマ。かつて全国の子どもたちが親しんだ遊びの文化を復活・継承しようと、埼玉県川口市安行原の安行小学校の校庭で、子どもたちが参加してベーゴマ教室が開かれた。少しずつ、技を広げて、同時にどれだけ大勢の人がベーゴマを回すことができるかというギネスの世界記録にも挑戦する計画だ。

 主催したのは安行小エコクラブ。代表で同小教諭の菊次哲也さん(68)は同校が創立150周年を迎える来年度のメインイベントにして、さらに世界大会も開きたい、と夢を膨らませている。

 教室で菊次さんはプラスチック製の漬物用大型バケツの上にテント用の厚いシートを張ったバケツ九つを用意した。床(とこ)と呼ばれるベーゴマを回す土俵として用いる。直径は約50センチだ。

 講師は全国唯一のベーゴマメーカー「日三鋳造所」(川口市鳩ケ谷本町、辻井俊一郎社長)の社員中島茂芳さん(63)と、市郷土資料館職員の井出祐史さん(44)。2人は自他ともに認める「ベーゴマ名人」で、集まった子どもたちに手を取って糸の巻き方やこまの投げ方、回し方を基礎から教えた。

 昼過ぎ、校庭に同小の児童ら約40人が集まり、ベーゴマ回しに挑戦した。「俺、家で練習してきたんだ」と男児が言うと、別の子が「うちでは回すなって言われてんだ」。できない子に「教えてあげるよ」と3年生の鈴木晴太さんが声をかけた。

 大半が「自分で回すのは初めて」の体験だったが、中島さんらの巧みな指導で約2時間後には全員が回せるようになった。何回も失敗していた3年生の木村空斗さんも成功すると、「やったね」と菊次さんらが拍手して喜んだ。

 菊次さんはこの日全員に「認定証」を贈った。その中から人に教えることのできた人にマイスター認定証を贈る。そうして指導者を育成し、川口をベーゴマで盛り上げたいという。

 井出さんは「川口は鋳物の街。意外と、子どもたちには知られていないが、ベーゴマは世界最小の鋳物製品なんです。このことをもっと宣伝したい」と話していた。

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