西島秀俊さん＆中村倫也さん主演の仮面ライダー生誕50周年記念企画作品『仮面ライダーBLACK SUN』。熱いファンを持つ作品であるためかネットでは賛否両論の意見も聞かれます。旧作ファンのライターが見た感想は？
2022年10月28日より全世界同時配信開始となった仮面ライダー生誕50周年記念企画作品『仮面ライダーBLACK SUN』。プライム・ビデオにて配信開始になるや、Twitter上では「BLACK SUN」がトレンド入りするなど、SNS上では大きな盛り上がりを見せました。
どうやらネット上には賛否両論どちらも飛び交っている状況のようですが、本稿ではオリジナルの『仮面ライダーBLACK』の大ファンであるライターが『仮面ライダーBLACK SUN』への想いを赤裸々に綴りたいと思います。
『仮面ライダーBLACK SUN』メインビジュアル
『仮面ライダーBLACK SUN』は、1987年から1988年にかけて放映された『仮面ライダーBLACK』を新たにリブートした作品。原作の石ノ森章太郎先生が「原点回帰」と位置付けたストーリーは重厚かつ硬派な印象が強く、まさに現代に相応しいものであるということから新シリーズ製作が決定したと言えるでしょう。
『仮面ライダーBLACK SUN』の物語は、南光太郎と秋月信彦の2人の少年が怪人となるため、体内にキングストーンを埋め込まれる手術を受ける場面から幕を開けます。その後、人間と怪人が共存する現代の日本を舞台に、ブラックサンとシャドームーンとなった2人が再会を果たし、それぞれがそれぞれの思いを抱え、過去と現在が交錯しながら、怪人誕生の根源である創世王を倒そうと動き始める姿を描きます。
まず初めに、『仮面ライダーBLACK SUN』を視聴するにあたって一つだけ頭に入れておいてほしいことがあります。
『仮面ライダーBLACK SUN』キャスト解禁
それは『仮面ライダーBLACK SUN』という作品は『仮面ライダーBLACK』と似て非なる全く新しい作品であるということです。監督である白石和彌氏を初めとした製作陣は、『仮面ライダーBLACK』を下敷きにしながらも、完全新作の『仮面ライダーBLACK SUN』というものを生み出したのです。
そのため『仮面ライダーBLACK』のストーリーラインを頭に入れながら鑑賞すると、「キングストーン」や「創世王」といった要素に関するあらゆる細かい設定に若干の疑問を憶えてしまう可能性が高いのです。なので、頭の中に前知識、予備知識のないフラットな状態で鑑賞することをおススメしたいです。
反差別や反政府といった現代社会の闇を炙り出す
『仮面ライダーBLACK SUN』場面写真１
本作は、人間による「怪人差別」が蔓延る日本が舞台。劇中では主に怪人たちの視点から反差別を謳い、怪人たちを迫害しようとする人間たちを敵視する描写が色濃いところが注目ポイントです。
決して完全なるフィクションというわけではなく、我々が暮らす現実世界でも「差別」というものは横行しており、ここ日本でも警察官が執拗に無実の外国人を取り締まったりといったようなニュースを目にする機会が、ここ数年で多くなっている印象を受けます。世界に目を転じても人種間の「差別」は非常に多く、声を上げる人々がデモ行進を行う様子が大きな話題となりました。そんな世相を「怪人」というフィクションの存在として取り入れたのが本作であり、まさに現代社会を映し出す鏡のような役割を果たしているのです。
加えて、本作は「政府」の在り方にも言及した作品でもあります。
『仮面ライダーBLACK SUN』場面カット３
本作で主に敵側の組織として強烈なインパクトを残すのは首相や「ゴルゴム党」と呼ばれる政府の官僚たち。オリジナルの『仮面ライダーBLACK』でも、ゴルゴムが政府にまで侵食し、世界のあらゆる重要職にまで支持者がいるといった描写がありましたが、本作では「政府」として存在しているという設定が設けられています。
とはいえ、本作のゴルゴムには二種類あり、悪役として存在感を発揮する「ゴルゴム党」、そして光太郎や信彦がかつて参加していた怪人差別をなくそうとする団体「五流護六」、いわば「正義」と「悪」の双方にゴルゴムの名を冠しているわけです。ゴルゴムという組織が一概に悪とは言えないという描写は、互いに信じた理想があり、どちらが「悪」と決めつけるのはおかしいという現代らしい解釈と言えるのではないでしょうか。ともあれ、まるで日本の某政党の官僚たちをイメージしたかのようなキャラクター描写が印象的で、まさに現実と隣り合わせの架空の日本が映し出されているのです。
『仮面ライダーBLACK SUN』メインカット
『仮面ライダーBLACK SUN』に見えた仮面ライダーらしさ
『仮面ライダーBLACK SUN』は、「反差別」や「反政府」といった現実味のあるドラマを描く中で、‘‘仮面ライダーらしさ’’を忘れていないという点でも、ファンの心を鷲掴みにしてきます。
オリジナルの『仮面ライダーBLACK』はいわゆる「昭和ライダー」に分類される作品であることから、やはり劇中には「昭和っぽい」設定がいくつも盛り込まれている作品です。その中の一つが「改造手術」という要素。元来、仮面ライダーや怪人は、人間が悪の組織によって改造された「改造人間」であることから、劇中で「改造手術」が行われるのは必須事項でした。しかしながら「平成ライダー」以降はそのような要素がほとんどなくなってしまい、新機軸が打ち出されていくことになるのですが、本作では「改造手術」が復活！
しかも、もともとは戦時下に政府が行った人体実験が起源であるといった言及もあることから、非常に説得力のある設定にブラッシュアップされています。
『仮面ライダーBLACK SUN』場面カット４
さらに「改造手術」だけでなく、仮面ライダーの在り方にも注目。本作は、仮面ライダーBLACK SUNとなる南光太郎と怪人差別を無くそうと奔走する少女・葵の‘‘絆’’を中心に物語が展開されていきます。
仮面ライダーは少年少女との絆を最も大切にし、人類の明るい未来のために戦い続ける戦士だと筆者は思っています。1971年の『仮面ライダー』から始まったその歴史の中で、仮面ライダーが子供たちの手を取り、その人生に大きな影響を及ぼすといった場面は、幾度も描かれてきました。そんな「仮面ライダー」らしさを語る上で、とても大事な要素を組み込んできたというところに、なんとも言えない感動を覚えました。その他にも、ノミ怪人が光太郎のバイクであるバトルホッパーのエンジン音を聴いて「この音は！」というセリフを口にする場面や大切な人間が犠牲になったことで仮面ライダーへと覚醒する場面など、本来の特撮ドラマ「仮面ライダー」とはかけ離れたリアルなドラマでありながらも、随所に「仮面ライダー」のあるべき姿を見せつけてくるところは、製作陣の‘‘仮面ライダー愛’’を大いに感じさせます。
『仮面ライダーBLACK SUN』ビジュアル
また、本作のオリジナルである『仮面ライダーBLACK』への敬意も忘れていません。
仮面ライダーBLACKは戦う前に「仮面ライダーBLACK！」と名乗りポーズを決めるのですが、その名乗りポーズをファイティングポーズの中に組み込んでいたり、終盤にはクジラ怪人によってブラックサンが復活を遂げる場面が忠実に再現されていたり、アネモネ怪人やカニ怪人、オニザル怪人など決してメジャーとは言えない怪人たちをチョイスした点など、『仮面ライダーBLACK』のファンであればあるほど、鳥肌級の感動が待ち受けているわけです。極めつけは、やはり最終話のオープニング！ ここは、視聴した時の感動を大いに味わってもらいたいため、詳しくは書きませんが、筆者は思わず涙してしまいました。もう、このオープニングだけで本作は間違いなく大傑作！
製作陣のファンへ向けた粋なサプライズに、拍手を送りたいほどです。劇中に見受けられる様々なアイテムにもイースターエッグが仕込まれているため、細かい部分まで見逃さないようにしましょう。
『仮面ライダーBLACK SUN』ビジュアル
本作の「五流護六」のマークであるメビウスの輪にもBLACKと関連した意味があるので、そういったことを考えながら鑑賞すると、より楽しめること請け合いです。
歳を重ねた南光太郎の姿を体現した西島秀俊さん、退廃的かつダークな演技で秋月信彦の内なる狂気を解放した中村倫也さん、2人の主演俳優の演技も見事な『仮面ライダーBLACK SUN』。オリジナルを深く掘り下げ誕生した全く新しい『仮面ライダーBLACK』の勇姿に刮目せよ！（執筆：zash）
『仮面ライダーBLACK SUN』作品情報
作品名 ：『仮面ライダーBLACK SUN』
監督 ：白石和彌
公式サイト：https://www.kamen-rider-official.com/kr50th/blacksun
（C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT
Prime Videoにて全10話好評配信中
【特報】白石和彌監督によるリブート作品『仮面ライダーBLACK SUN』制作決定！！
via
オリジナル作品『仮面ライダーBLACK』作品情報
創世王が率いる暗黒結社「ゴルゴム」。 その次期創世王候補＝世紀王として選ばれたのは、南光太郎とその親友・秋月信彦であった。
世紀王「ブラックサン」へと改造された光太郎は、脳改造を受ける寸前に脱出を果たし、ゴルゴムと戦うことを決意。
襲い掛かる数々の怪人。そして、ゴルゴムの戦士「シャドームーン」として立ちはだかる信彦。
光太郎は正義の使者「仮面ライダーBLACK」を名乗り、ゴルゴムの陰謀を打ち砕く！
放送期間 ：1987 年 10 月 4 日～1988 年 10 月 9 日
エピソード数 ：51 話
原作 ：石ノ森章太郎
脚本 ：上原正三 杉村升 ほか
監督 ：小林義明 ほか
制作 ：毎日放送 / 東映
公式サイト ：https://www.kamen-rider-official.com/riders/31 ■西島秀俊＆中村倫也は『仮面ライダーBLACK SUN』をどう演じる？注目ポイントは…
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