梶原善が魅力たっぷりの“今見ておくべき”ビルを満喫! 話題の「ビルぶら!レトロ探訪」

建物の老朽化や再開発によって姿を消しつつある昭和の複合ビル=“日本ならではのビルヂング”に息づくレトロな情緒を堪能する、「ビルぶら!レトロ探訪」(BSフジ)が人気を呼んでいる。

番組では、高度経済を支えたニッポンのオヤジたちを優しく包み込むユニークで昭和レトロな外観&夢満載な館内が懐かしい昭和のビルを、俳優・梶原善が気の向くままに散策。食堂や純喫茶、ゲームセンター、居酒屋、バー&スナックなどがひしめき合うテナント街で働く、癖のある店主や女将(おかみ)、足しげく通う常連さんとの、昭和談義に華を咲かせる。そんな梶原に番組ならではの面白さ、エピソードなどを聞いた。

「僕自身、街をてくてく歩いて古いお屋敷だとか見るのが好きなこともあってお引き受けしたんですけど、商業ビルに入ってお店の方やお客さんに話を聞くというイメージがなかったもので、最初のうちは手探りでした」

飄々(ひょうひょう)とした語り口から、バラエティーや旅番組の常連のように勘違いするが、実は「こうしたお仕事はほぼ初めて」。

「もっと建物の構造だとかを紹介する、インテリ系の番組だと思っていたんです。でも、よくよく考えたら、僕にお話が来るということは、庶民系だろうなと思い直して(笑)、慣れないなりに楽しくやらせてもらっています」

大切にしているのは「相手との距離感」。「慣れないなりに」と謙遜するものの、持ち前のほのぼのとした雰囲気で、昭和のビルの魅力を余すところなく案内する。

「こちらが何も聞いていないのに、たくさんしゃべってくださる方がいらっしゃるかと思えば、その逆もあったり。一般の方が相手なので難しさもありますが、そこが面白いところです。店主さんが話してくださる、その店の歴史やエピソードも聞き応えがあります」

そうしたロケの最中は、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での自身の演技が評判となった、暗殺者・善児に助けられることもあるそうだ。

「大河に出させてもらったおかげで『見たよ』と声を掛けられますし、最初のコミュニケーションが取りやすいです。この番組のロケがやりやすいのは、少なからず善児のおかげですね(笑)。実際はそんなに出番があったわけではないのですが、それだけインパクトがある役だったということでしょうかね」

飲食店はもちろん、専門店からマニアックな店まで。昭和の香りを色濃く残すテナントのショーウインドウを眺めているだけでも楽しい。

「最近は少し慣れてきたので、(ロケの)時間がいくらあっても足りないくらい。いろんなお店が見たくて困ってしまいます(笑)。回を重ねるごとに、番組を見られた方がちょいちょい足を運んでくださるという声も聞こえてきて、反応もうれしいです」

10月の番組スタート以来、東京・新橋に半世紀にわたってたたずむ「ニュー新橋ビル」をはじめ、横浜の「エイトセンター」などを訪ねてきた中、お気に入りのビルは、11月22日・29日に放送予定の東京・有楽町「東京交通会館」。休日は、ロケでは訪れることができなかったフロアやテナントも見て回るとか。

「どのお店もバラエティーに富んでいますし、飲食店はどこもおいしいですし、3階のテラスはまどろむのに丁度いいんですよ。実はロケの後、3、4回は行きましたからね。番組で紹介した際は、あまりの痛さに途中で諦めたマッサージのお店も、もう一度チャレンジしました。こちらもオンエア(本放送スタート前の9月25日「予告総集編スペシャル」)の後、番組を見て訪れている方がいるそうです」

昭和から続く老舗店のメニューにも舌鼓を打つ。まだ実現はしていないが、横須賀「三笠会館」の「南蛮茶屋」も再訪したい店の一つだ。

「いい感じに赤茶けた店内がオヤジには理想的で、苦味が効いたアイスコーヒーが本当においしかった。“ザ・昭和”なナポリタンも、もう一度食べたいですね。『ニュー新橋ビル』のコールドプレスジュースもまた飲んでみたい。再開発やなんかで、昭和のビルがどんどんなくなっていますから、“急がなきゃ”って感じです」

再開発はやむを得ない。しかし、今見ておかなければ、いつかはなくなる昭和のビルも多い。

「前を通り過ぎることはあっても、中に入ったことのないという人も多いと思いますが、僕が30数年前に上京して以来、初めて『東京交通会館』に入ったように、いざ扉を開けてみると本当に楽しい。この番組をやらせてもらって“知る”ということは、いくつになっても大事だなと、僕自身も思いましたし、皆さんも機会があれば足を運んでいただきたいですね」

岡山県岡山市の出身で、上京後は若者文化の発信地、東京・下北沢で青春時代を過ごした。いつかは東京近郊以外の街にも…と、夢は膨らむ。

「岡山の駅前も下北沢も、ずいぶん変わっちゃいましたからね。地方の場合、テナントの数など難しいこともあるかとは思いますが、時代の波に飲み込まれる前に訪ねられたらいいなと思います」

【プロフィール】

梶原善(かじはら ぜん)
1966年2月25日生まれ。岡山県岡山市出身。三谷幸喜が主宰する劇団東京サンシャインボーイズを経て、舞台、ドラマ、映画などで幅広く活躍中。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)での好演は記憶に新しく、現在、「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジテレビ系)、「ファーストペンギン!」(日本テレビ系)に出演中。映画「湯道」「ロストケア」が2023年公開。2月には舞台「アンナ・カレーニナ」が控えている。

【番組情報】

「ビルぶら!レトロ探訪」
BSフジ
火曜 午後10:00~10:55

取材・文/橋本達典

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