背中に「炎」の新種、福井県でホムラサンショウウオ確認 採取の研究者「模様が独特、ドキっとした」

福井県おおい町の山中で採取されたホムラハコネサンショウウオ=2011年11月(川内一憲さん提供)

 国立科学博物館(茨城県つくば市)は、福井県両生爬虫類研究会副会長の川内一憲さん(74)=あわら市=が福井県内で採取したサンショウウオについて、日本固有種ハコネサンショウウオの新種と確認した。2022年2月に研究論文を発表した。背中に炎のような赤い模様があるのが特徴で、「ホムラハコネサンショウウオ」と命名された。県内で確認された新種のサンショウウオは5種目。川内さんは「福井の山地渓流がサンショウウオにとってよい環境が残されている証拠だ」と喜んでいる。

 研究論文は、同館の動物研究部脊椎動物研究グループの吉川夏彦研究員(40)らが国際誌に発表。DNA分析のほか、背中の独特の模様など形態的な特徴から、従来のハコネサンショウウオと分けたという。

 川内さんは2005年に吉川さんから依頼を受け、06~11年に福井県嶺北、嶺南の山地を回り7地点で成体や幼生を採取、吉川さんに送った。そのうち坂井市の幼生5匹、南越前町の成体3匹、おおい町の成体1匹がホムラハコネサンショウウオと同定された。今回近畿、北陸7府県で生息が確認された。

 吉川さん自身も08~10年ごろに南越前町で幼生を採取しており、「福井は雪が多く冷涼湿潤で森林がよく残されており、ホムラを含むハコネサンショウウオ属の生息によい環境がある」と解説。「川内さんのような研究者の生息地情報や採取のおかげで、研究がスムーズにいった」と在野の研究者らの貢献を高く評価している。

 川内さんは毎年4~6月や秋に山中に入り、標高70メートルから数百メートルの渓流や川沿いでサンショウウオを探す地道な活動を続けている。ホムラハコネサンショウウオの発見について「背中の模様が独特で、これは新種じゃないのかとドキっとした」と振り返る。新種と確認されたことに「素直にうれしい。研究会の活動の弾みになる。福井で6、7種目の発見に向け意欲が湧いてきた」と喜んでいる。

 ◇ホムラハコネサンショウウオ 日本固有種ハコネサンショウウオの新種で、ハコネサンショウオとしては7種目。福井など本州中部・近畿に限定的に分布する。成体の大きさは14~17センチ。学名「オニコダクティルス・ピロノータス」と命名された。日本の小型サンショウウオは10年ほど前までは20種ほどだったが、最近のDNA解析手法の発達で分類が進み、現在は50種近くになった。ただ大半が絶滅の恐れがある。

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