国文化財「旧桔梗屋」を使ってみて 藤沢市が社会実験へ

11月5、6日に行われた旧桔梗屋の一般公開やキッチンカーの出店=藤沢市

 藤沢市は2023年1月から、旧東海道(現国道467号)沿いに立地する国登録有形文化財「旧桔梗屋」(同市藤沢1丁目)を効果的に活用する社会実験を実施する。民間事業者などからアイデアを募り、一定期間、店舗などとして使用してもらい、事業ニーズや収益性を確認。旧藤沢宿の街並みを継承しながら、にぎわい創出や回遊性向上を図る。

 市が実施するのは「旧桔梗屋トライアル・サウンディング」。公共施設の暫定利用を希望する民間事業者などに実際に使用してもらう社会実験で、法人、個人事業主、任意の団体などを対象に現在、参加者を募っている。

 桔梗屋は茶・紙問屋を営んだ旧家で、市内に現存する唯一の土蔵造りの店蔵や江戸時代末期の文庫蔵を含む3棟が国登録有形文化財に登録されている。20年10月に所有者が建造物(店蔵、主屋、文庫蔵)を市に寄付した。

 旧桔梗屋の取得を契機に市は藤沢宿周辺の景観の継承と活性化の両面から有効活用を検討。これまでに市民団体や地元商店街と連携し、アートの展示や物販などの催しを開催してきた。

 11月5、6の両日には、旧家に残された家具や小物の譲渡会、フリーマーケットやキッチンカーの出店、施設内部の公開が行われ、2日間で約700人が参加。普段は閑静な地区が終日にぎわった。

 市は15年に同エリアを「旧東海道藤沢宿街なみ継承地区」に指定。景観を保存しつつ、歴史的建築の活用を進め、旧関次商店(国登録有形文化財)の穀物蔵と肥料蔵は、市の補助を受け、同地区の特性を生かした店舗としてそれぞれベーカリーと生花店が開業した。

 藤沢宿の中心部にある旧桔梗屋は、とりわけシンボル的存在。トライアル・サウンディングは本格的な活用の前段となる取り組みで、来年1月4日から5月まで、複数の事業者、団体に1日以上30日以内の範囲で実験的に使用してもらい、歴史の継承と地域活性化につながる活用方法を模索する。

 市街なみ景観課は「お試しで使用し事業ニーズや収益性の確認ができるので、さまざまなアイデアが出されることを期待している。公民連携によって、歴史的建築物の魅力ある新しい形を探っていきたい」としている。

© 株式会社神奈川新聞社