長崎県民表彰112人22団体 23日に表彰式

(写真右から)「自分が持っているものを少しでも社会に還元していきたい」と話す西川さん=大村市杭出津1丁目、「壱岐最後の鍛冶屋として体力が続く限り続けていく」と語る山川さん=壱岐市芦辺町

 長崎県は地方自治の振興や産業、文化、教育などで顕著な功績があった個人・団体をたたえる本年度の県民表彰に112人と22団体を選んだ。表彰式は23日午前10時半から、県議会議場で行う。
 県民表彰は1970年から毎年実施し53回目。功労種目別の個人数内訳は▽人命救助14▽徳行1▽消防・防災7▽地方自治11▽社会福祉22▽保健・環境8▽産業14▽教育文化13▽交通安全・防犯5▽勤労1。各分野の優良団体は12団体。スポーツなどで優秀な成績を収めた個人・団体が対象の特別賞は16人10団体だった。

◎社会福祉・西大村福祉会理事長 西川義文さん(67) 保育環境の改善に尽力

 県内約470の保育園などでつくる県保育協会の会長を昨年まで務め、現在は顧問。「子どもたちが元気で健やかに成長できるよう、保育園が地域の子育てを総合的に支援する中核施設となれば」と話す。
 少子化による園の存続や保育士不足など、県内の保育園が抱える課題はさまざま。同協会では現状を国や自治体に伝えて現場に即した解決策を要望し、保育環境の改善に尽力してきた。
 医療的ケアを必要とする子やアレルギーのある子、保育園や幼稚園につながっていない子など、子どもが抱える問題は多様化。支援を要する家庭も増えており「保育園に求められる役割は大きくなっている」。
 一方で「大きなプレッシャーがかかる中、保育士も疲れている」と指摘。「子どもとしっかり向き合うため、ゆとりある保育環境が必要」と、保育士の待遇改善の重要性を強調する。
 自身も大村市で経営する新城保育園で園長を務め、今年4月に息子に引き継いだ。受賞の知らせに「園の保育士や協会の職員など、周囲の支えがあったからこそ。自分が持っているものを社会のために還元していきたい」とほほ笑んだ。

◎勤労・壱岐伝統本格鍛造制作元 山川良助さん(81) 島内最後 鍛冶一筋65年

 壱岐市芦辺町で戦前に創業した山川鍛冶製作所の2代目。「壱岐伝統本格鍛造制作元」を看板に65年間、鍛冶一筋で生きてきた。
 父末生(すえお)さんは終戦直後のシベリア抑留中、鍛冶の腕前を認められ優遇されたという。その経験から「技術は身を助ける」と説く父の元で、中学卒業後の16歳から修業を始めた。「目で見て覚えろ」と厳しく、何度も怒鳴られるのを見た母からは「やめてもいい」と言われた。
 父が他界して25年。独りで刃物や農具を作り続けた。春先にはウニかきなどの磯道具も。強度を高めるために鋼を入れ打つ伝統的な技法を守っている。修理や研ぎを頼まれることも多い。
 以前は島内に十数軒の鍛冶屋があった。年に一度、職人みんなで集まって労をねぎらうのが楽しみだったが、今も鍛冶を続けているのは自分だけ。「後継者がいないのは残念だが、お客さんに満足してもらうには十年以上の修業が必要」と現実を静かに受け入れる。
 「お客さんや家族の支えがあって続けてこれた。本当にうれしい」と受賞を喜ぶ。そして誓う。「島内最後の鍛冶屋として体力が続く限り続けていく」

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