大臣更迭、後任人事で「菅副総理」また幻に なぜ見送り

岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相は20日夜、政治資金などを巡る問題が相次いで発覚した寺田稔総務相を更迭し、後任に松本剛明元外相を就けた。人選は先週末から始まっていたが関係者の話を総合すると、この間に菅義偉前首相(衆院2区)を副総理兼務で起用する案も検討されたという。

 同様の構想は8月の内閣改造の折もあった。閣僚の「辞任ドミノ」が生じている中で、秋葉賢也復興相も事務所費を巡っての“脱税疑惑”が指摘されており、危機は続く。「早期の抜本的な改造は避けられない」(自民の閣僚経験者)との見方も広まる中、今回も幻となった菅副総理起用構想だが、今後の国会審議や政局の行方によっては再浮上する可能性がありそうだ。 

 複数の自民重鎮らが「この機に菅氏を取り込めば党内に敵はいなくなる。ピンチをチャンスに変えよ」と首相周辺に進言したという。安倍晋三元首相の最大派閥が後継会長人事でまとまらない中で、無派閥議員をまとめている菅氏を味方にできれば党内基盤は固められるとの皮算用だ。

 見送りの理由は「打診して断られたことが漏れれば首相の求心力がますます低下する」(岸田派議員)。一方で「菅氏は受けない」との事前情報を踏まえ、断られた折には菅氏側近の坂井学前官房副長官(同5区)の総務相起用を続けざまに打診するとのシミュレーションも行われたという。

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