<社説>COP27閉幕 温暖化対策は人権問題だ

 エジプトでの国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、気候変動で生じた発展途上国の「損失と被害」に対する支援基金の設立で合意し、閉幕した。2日延長して成果文書の採択にこぎ着けたが、温室効果ガス削減目標引き上げは立場の違いを埋めきれず、化石燃料の段階的廃止も盛り込めなかった。 途上国の30年来の要求だった支援基金で合意できたことは画期的だ。途上国の被害を人権侵害と捉え、温室効果ガスを放出してきた先進国・新興国の歴史的責任を問うものだからだ。一人一人が温暖化対策の責任を自覚することが求められる。

 今回も日本の存在感は薄かった。西村明宏環境相は基金設立には触れず「技術的な支援をしっかりやっていくべきだ」と発言していたが、欧米が基金に歩み寄りを見せるとそれに従った。そんな日本に今年も「化石賞」が贈られた。世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」が、対策に後ろ向きな国に贈る不名誉な賞だ。化石燃料への公的拠出が世界トップだったこと、首脳級会合に岸田文雄首相が欠席したことが理由である。賞の常連から脱する努力をすべきだ。

 ロシアがウクライナ侵攻を続ける中での開催だった。侵攻開始から約7カ月間の被害の大きさを、その復興も含めて、二酸化炭素(CO2)換算で少なくとも1億トンに達すると、国際研究チームが会議の中で紹介した。オランダ1国の同期間の経済活動で排出する量に相当するという。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は首脳級会合にビデオメッセージを寄せ「ロシアの侵攻がエネルギー危機を招き、多くの国が石炭火力発電への依存を高めた」と非難した。そして、環境破壊を続けるロシアの軍事的野望は「罰せられる以外にない」と、気候変動対策の観点からも制裁の必要性を訴えた。

 軍事活動により、どの国も膨大なCO2を排出している。1997年のCOP3での京都議定書で、軍事・防衛部門からの温室効果ガスの排出は計算の対象外とされ、2015年のパリ協定でも引き継がれ現在に至っている。

 今、この「抜け穴」をふさぐ軍事・防衛の排出量報告義務に道を開く機運が生まれている。6月に開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議では、軍事活動での排出削減で一致した。沖縄は米軍の活発な活動があり、自衛隊の増強が進み、軍事演習が拡大している。人ごとではない。軍事のCO2排出を聖域化することは許されない。

 気候変動が人類全体を脅かしている今、軍事基地や装備を増やし演習を繰り返すより、外交によって脅威を低減させ平和構築を目指す方が理にかなっている。「温暖化対策は人権問題」という立場に立ち、軍事にではなく、途上国支援と脱化石燃料にこそ予算を振り向けるべきだ。

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