空港アクセス鉄道、熊本県に〝宿題〟 検討委は肥後大津ルート案「妥当」…運動公園へのアクセスは?

ロアッソ熊本の試合後、車が数珠つなぎとなった県民総合運動公園周辺の道路=10月23日、熊本市東区

 JR豊肥線と熊本空港(益城町)を結ぶ熊本県のアクセス鉄道計画を議論する検討委員会が、肥後大津駅(大津町)から分岐するルート案を「妥当」と結論づけた。蒲島郁夫知事も「将来性を感じる」と話し、肥後大津ルートの流れができつつある。しかし、このルートだと計画の目的の一つに挙げてきた県民総合運動公園(熊本市東区)のアクセス改善につながらず、県は新たな宿題を抱える格好だ。

 「直通運行ができる肥後大津ルートが鉄道事業者の立場で見れば、素直なルートだ」。9日、熊本市であった検討委の会合。ルート選定に関し、JR九州の中野幹子熊本支社長はきっぱりと言った。ほかの委員からも、肥後大津ルートを評価する意見が相次いだ。

 ただ、その2週間余り前、運動公園一帯の渋滞という弱点が改めて露呈。来訪者から鉄路によるアクセスを求める声も聞かれた。

 10月23日のJ2ロアッソ熊本のリーグ最終戦。横浜FCの中村俊輔選手の引退試合と重なり、運動公園内のスタジアムには2万人超が足を運んだ。無料のパークアンドバスライドやJR光の森駅からのシャトルバス増便といった対策が取られたものの、運動公園の駐車場はすぐに満杯に。周辺道路の大混雑に、しかめ面のファンも多く見られた。

 宮崎県高千穂町の男性公務員(54)は「駐車場に入るまでに長時間かかった。鉄道があれば便利なのだが…」とポツリ。よく観戦に訪れるという熊本市中央区の男性会社員(35)は「運動公園から幹線道路に抜ける道路や駐車場の出入り口が限られており、車が流れない」と話し、道路対策を注文した。

 肥後大津ルートを「妥当」とした検討委の会合でも、熊本市都市建設局の井芹和哉局長が「交通渋滞の課題があることは議事録にしっかりと残すべきだ」と指摘。九州産交バスの岩﨑司晃社長は「運動公園はいつも需要があるわけではない。バスの機動性をうまく利用してはどうか」と提案した。

 運動公園一帯では大規模イベント時の混雑が以前から起きてきた。このため、県は空港アクセス鉄道計画で三里木駅(菊陽町)から分岐するルートを本命視。運動公園付近に中間駅を設けることでアクセス改善を図る構えだった。

 だが、世界的半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の菊陽町進出が昨年11月に公表されると、県は「状況が変わった」として仕切り直し。原水駅(菊陽町)からの分岐ルートも含めて3案を再検討したところ、肥後大津ルートの概算事業費が約410億円で最も安く済み、費用対効果を示す「費用便益比」は30年間で1・03と最も高い、とした。

 仮に肥後大津ルートで決まった場合、運動公園の渋滞緩和にはつながらない。このため、県は部局横断のプロジェクトチームで、興行主が手配するシャトルバスの運行に関する支援や、駐車場などの在り方について課題や対応案の整理を急いでいる。

 アクセス鉄道のルートは「総合的に検討した上で最終判断する」と言う蒲島知事は、11月2日の定例記者会見で「大規模イベント時の運動公園のアクセス改善と周辺の渋滞対策の必要性」に言及。「ソフト、ハード両面で可能な対応を検討する」と強調した。

 運動公園へのアクセスの良しあしは県内外からの集客に影響し、ひいては地域振興に直結する課題だ。アクセス鉄道の議論ばかりを先走りさせずに、新たな宿題にも具体的な方策を早急に打ち出す必要がある。(内田裕之)

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