漫才で原爆体験継承 お笑いコンビ「アップダウン」 被爆の実相伝える

劇で永井隆博士を演じる竹森さん(左)と、深堀さん役の阿部さん=とぎつカナリーホール

 お笑いコンビ「アップダウン」が20日、長崎県西彼時津町野田郷のとぎつカナリーホールで、長崎原爆がテーマの劇を漫才に織り交ぜた「原爆体験伝承漫才 希望の鐘」を披露した。新たな継承の形として、笑いを交えて戦時中の日常や劇制作の裏話を紹介した後、迫真の演技で77年前の惨禍や平和の尊さを伝えた。
 アップダウンは北海道出身の阿部浩貴さん(45)と竹森巧さん(44)が1996年に結成。コントや漫才のほか、アイヌ民族や特攻隊を題材にした芝居も制作し、全国で公演してきた。この夏に26年所属した吉本興業を退所し、現在はフリーで活動する。
 希望の鐘は「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」(山崎和幸会長)の依頼で制作。被爆医師の故永井隆博士の著作を基に、竹森さんが永井博士、阿部さんが11歳で被爆し「心の傷」を抱える少年を演じた。昨夏、長崎市内で初めて披露後、北海道や東京でもオファーを受け5回公演した。
 今回の公演は同会が主催し、約200人が訪れた。市立山里中2年の入江心音さん(14)は「学校では被爆講話を聞く機会があるけど、笑いを交えたものは初めてで新鮮。感情移入ができて日常の大切さを感じた」と感想。劇で少年のモデルとなった故深堀悟さん=享年(83)=の妻絹代さん(86)、長男武彦さん(54)も観賞し「全国で公演して体験を継承してくれているのはありがたい」と語った。


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