【考・九州男児】上智大・三浦まり教授に聞く

強さ象徴 昭和っぽさ 現実変化 生き残り岐路

 アンケート監修を担当し、ジェンダー問題に詳しい上智大法学部の三浦まり教授に、今回の結果からみえてくる「九州男児」の今と未来について聞いた。

 予想よりも男女差や年代差が大きく、興味深い結果だ。「九州男児」という言葉のイメージについて、女性は「亭主関白」「男尊女卑」などが目立ち、圧倒的にネガティブ。「一本気」「勇ましい」といったポジティブな要素もあるものは男性に多く選ばれた。

 イメージが引き継がれていくべきか、についても若い女性ほど否定的、高齢な男性ほど肯定的。若い人ほどジェンダー平等志向が強い現れだろう。九州外の人が抱くイメージもネガティブで、イメージ先行型の言葉であることもうかがえる。

 普段、この言葉を聞くのは「うちの夫は九州男児だから…」といったパートナーの不満。3月に公表した「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」の中で、夫の家事・育児時間は福岡が全国最下位だった。九州は低い順位の県が多かった。とは言え、時間で見ると九州の男性だけが際立って少ないわけではない。全国的にどんぐりの背比べ。ただ、こうしたステレオタイプの言葉があると、「やっぱり九州男児だからね」という風に理解や納得のために使われ、強化・再生産される。

 言葉はジェンダー役割を強化し維持することにもつながる。だからこそ、アンケートでも女性は反発した。男性にとっても、自分が「九州男児のイメージと合わない」といった葛藤や疑念に苦しむことがあるかも。どの言葉が生き残り、廃れるかは現実が変化することで変わっていく。私たちが取捨選択もできる。

 「九州男児」とは、強い男性像のイメージで軍事的な背景から作られ、上り調子の日本を象徴するような言葉だったのではないか。昭和っぽい現実があったから生き残ってきたが、共働きが普通となって刷新が求められている令和の時代となり、生き残れなさそうな状況。今、この言葉は揺れている。

 ジェンダーロール(性別役割)が変わるスピードは速く、男性のケア力はますます必要となる。亭主関白なんて現実にはどんどん少なくなり、若い人にとっては絶滅危惧種。「九州男児」という言葉の遺産をポジティブに刷新して生かしていくのか、時代の流れとともに博物館送りとなって使われなくなるのか、転換期だろう。

 みうら・まり 1967年東京都生まれ。カリフォルニア大学バークリー校でPh.D.(政治学博士)取得。2010年から現職。21年にフランス国家功労賞シュバリエ受章。専門はジェンダーと政治、福祉国家論

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