ペットのがんで治療費が50万円を超えることも。ペット保険加入する際の注意点とひとの医療保険との違いを解説

コロナの蔓延で、自宅で時間を過ごすことが多くなり、ペットが家族の一員として、今まで以上に大切な存在となっています。そこで気になるのが、公的な保険制度がない、ペットの病気・ケガの備え。実際にペットが病気になった場合、どの程度の金額がかかってしまうのでしょうか。治療費の試算とペット保険について解説していきます。


4世帯に1世帯はペット保有の現状

ペットフード協会が発表する全国犬猫飼育実態調査によると、2021年12月現在の犬の飼育頭数は710万頭。2016年の800万頭に比べると90万頭程減少しています。かたや猫の2021年の飼育頭数は894万頭。2016年の833万頭に比べると61万頭増えており、犬猫それぞれ増減はありますが、ペットの総数としては28万頭ほど減少しています。

人口の減少、高齢層の増加で飼育困難なひとが増えた、長引く不況で経済的にペットを飼えないなどが減少の要因と考えられます。

減少傾向にありますが、2021年の世帯数は5,785万世帯なので、3.6世帯に1頭の割合でペットを飼っているひとがいることになり、私たちの生活にペットは切り離せない存在になっているのも事実です。

日本には健康保険制度があり、年齢や年収により負担額は違うものの、原則、医療費の3割負担で治療を受けることができます。治療費も公的保険制度があるため、診療報酬が決まっており、ある程度は治療費が定まっています。

では家族であるペットにケガや病気が起こってしまった場合はどうでしょう。

ペットに対しての公的な保険制度は残念ながらありませんので、動物病院での診療費・医療費は獣医の料金設定にゆだねられています。全額自己負担となる上に、病院によって、治療方針や料金体系なども大きく違いますから、高額な治療費になる場合もあります。

私たちが、3割の自己負担分を軽減するために、民間の医療保険に加入するのと同様に、全額自己負担となるペットの治療費についても民間のペット保険に加入する必要はありそうです。

ペットも高齢化、全額自己負担は家計圧迫

昔に比べるとペットも高齢化(平均寿命犬14.65歳 猫15.66歳)が進んでおり、高齢になれば、当然病気になるリスクも高まります。人間同様、ペットのがんも増えています。

ペットががんに罹患した場合、治療にどのくらいの費用がかかるのでしょうか?

以下は乳がん治療に係る費用の一例です。治療費は自由診療の部分が多いため、動物病院により大きく異なりますので、あくまで参考としてご覧になってください。

事前検査 約15,000円 X線検査、血液検査等
手術 両側乳房摘出 20万~30万円(6日の入院費用含む)
手術後 抗がん剤治療 1回1万~3万円 月2~3回(半年以上治療を続けるケースもあり、回数は経過による)

合計で 50万円以上の治療費がかかる計算です。

大型犬、小型犬、体重の違いによっても治療費は変わってきますが、大事なペットとはいえ、50万円の出費は家計をかなり圧迫します。

ペット保険、ひとの医療保険とどう違う?

ペット保険は、ひとの一般的な医療保険の日額払とは違い、治療費の実費の50%~70%を支払う形式が主流です。中には90%を支払う商品もありますが、ひとの健康保険3割負担を考えると70%補償が妥当といえるかもしれません。

治療費実費の70%を支払うとはいえ、通院や入院の日額に1万円から2万円程度の上限額が定められており、支払限度日数がある商品が主流です。手術費用にも上限があり、入通院など含めた全体の支払金額に年間限度額がある場合もあります。
加入の際は複数商品を比較検討してみましょう。

もう1点、ひとの保険と大きく違う点は、保険料の推移です。ひとの保険は、更新型保険を除き、加入時の年齢の保険料が一生変わらず続きますが、ペット保険は1年更新型で、毎年年齢に合わせ保険料が上がっていきます。早く入れば安い、ひとの保険とは違うので、そのうち加入しようと考えているひともいますが、病歴の告知があると加入が難しくなりますし、新規に加入する場合は、10歳、12歳未満などの年齢制限があります。早めに加入した方がいいでしょう。

家族の一員として準備したい葬祭費用は?

ペットが亡くなってしまった場合、公的な施設ではどのような対応をしてくれるでしょうか? 自治体により対応は様々で、一貫した答えはありません。

例えば、東京都江東区の場合、原則飼い主が処理をすること。と表記されています。やむを得ない時は、電話で申込をし、清掃処理業者が1頭2800円で引取り、合同火葬を行った後に共同墓地へ埋葬という流れになるそうです。

青森県弘前市では、弘前市斎場で火葬をしてくれます。お骨を引取る場合は、体重に関係なく1頭6600円。お骨を引取らない場合は体重5キロ未満2200円~40キロ以上6600円まで体重によって火葬料が変わり、合同墓地へ埋葬してくれると表記されています。

公的施設での火葬に変わり、最近では、ペットの火葬を執り行ってくれる民間業者が増えています。合同火葬の場合約15,000円、個別火葬の場合約25,000円、立会いの個別火葬は約30,000円の料金がかかります。その他に骨壺の料金、地域によっては加算料金があるところもあります。訪問火葬車が自宅へ訪問、お別れの後に立会い火葬、お骨上げ迄、丁寧に葬送を行ってくれます。

長年連れ添った遺族の意向に沿った新しいサービスといえます。ひとの葬儀に比べると費用は掛かりませんが、ペット保険にオプションとして葬儀費用を付帯する商品が発売されています。ペットの平均寿命を考えると、見送る可能性が高いわけですから、治療費用に付帯し葬儀費用を保険で準備することも1案です。

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