最も陸に近づいた魚!?古生代のデボン紀後期に登場した魚とサンショウウオを併せもつ私達の祖先『ティクターリク』とは?【古生物の話】

魚とサンショウウオを併せもつわたしたちの祖先

ティクターリクは、古生代のデボン紀後期に登場した肉鰭類(にくきるい)と呼ばれるグループに分類される生物です。

初期の肉鰭類はおよそ4億年前に出現したと考えられるグループです。そして、その子孫から、陸上で生活する四足動物(脚やそれに類する器官をもつ脊椎動物。哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類を含む)の多くが生まれることになります。わたしたち人間も四足動物ですから、魚とわたしたちをつなぐ、進化の架け橋を示す種だといえるでしょう。 すなわち、わたしたち人類の遥か遠い祖先筋にあたる存在なのです。

ティクターリクの化石は、北極点から約1600キロのカナダ・エルズミア島南部から発見されました。扁平(へんぺい)な頭部をもっており、体長は最大で2.7メートルにもなったと推定されています。

肉鰭類の特徴は、胸ビレや腹ビレに柄のような構造があり、そのつくりが四足動物と似ている点です。そのため、胸ビレや腹ビレが手や脚につながったと考えられています。そのなかでも「もっとも陸に近づいた魚」といわれるのがティクターリクなのです。

古生代デボン紀の海の浅瀬や川や湖などの淡水域で暮らしていたと考えられています。

ティクターリクはヒレや鱗(うろこ)など、魚類の特徴をもちながらも、発達した肋骨や頭頂部に近い眼、平たい頭部など、ワニのような特徴も併せもっていました。

ティクターリクのヒレにはヒジ、手首にあたる骨と関節があり、かなり柔軟に動かすことができました。浅瀬でパタパタと動き回るのに役立ったことでしょう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。

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