シオノギ製薬の新型コロナ治療薬「ゾコーバ」、今回は緊急承認

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は22日、緊急承認制度の枠組みで承認申請が出されていた塩野義製薬の新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」について、新たに出された治験データも含めて審議を行い、有効性が認められたとして承認を了承した。同省はこれを受け即日薬事承認した。

新たな治験データ提出、有効性認められる

 「ゾコーバ」をめぐっては、7月の審議会で有効性が認められないとして、その時点での承認は見送られていた。塩野義製薬はこれを受け、最終段階の治験で得られた1800症例あまりの解析データを新たに提出。審議会はこれについて評価を行い、有効性を認めた。

 審議会で新たに提出されたのは、最終段階の治験で収集した1,821例の症例データ。7月で示されたデータを合わせると、新型コロナウイルス感染症の主な5症状(せき、のどの痛み、倦怠感、発熱、鼻水・鼻詰まり)が7日間前後ですべてほぼなくなることが示されたほか、薬を飲まなかった場合よりも24時間前後、症状がなくなるまでの期間が短縮された。既存の治療薬とは違い、重症化リスクの少ない患者にも投与可能なほか、現在の主流である変異株、BA.5に対する効果も認められたという。

 しかし、重篤な副作用は認められなかったが、多くの慢性疾患、がんなどの治療薬を服用している患者は併用できない。具体的には慢性心不全、狭心症、心筋梗塞、高血圧症、肺高血圧症、偏頭痛、高脂血症、不眠症、がん悪液質、白血病、統合失調症、肺結核、MAC症、腎臓病、静脈血栓症、前立腺がんと診断され、治療薬を服用している場合は併用できないとされている。また、動物実験段階では胎児への影響が懸念されたことから、妊娠中や妊娠の可能性のある女性も服用できない。

 加藤勝信厚生労働大臣は、緊急承認を発表した会見のなかで「国内企業初の経口薬で、これまでと異なり、重症化リスク因子を有しない患者を含み対象が広がる。新たな治療の選択肢として期待する。国内企業が製造販売する薬品でもあるから、安定供給の観点からも大きな意味がある」と緊急承認の意義を強調した。

 厚労省は塩野義製薬から100万人分を購入する契約を既に結んでおり、12月初頭には医療機関が処方できるよう供給体制を構築する。パキロビッドパックの処方実績がある医療機関から供給を開始するという。

 具体的な禁忌、既存服用薬との併用禁止については、厚生労働省から添付文書の抜粋が公開されているので確認してほしい。

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