勤労感謝の日

 今どきの経営者がこんなことを…と、あっけにとられ、破天荒とされるこの人ならば言いかねないと、うなずきもする。米国のツイッターを巨額で買収したイーロン・マスク氏が社員に、長時間労働を受け入れるか退職するか、選ぶように迫ったという▲従業員は世界に7500人いたが、退職者が続出している。残りたければもっと働け-と命じるのは、従業員が去るように仕向け、人を減らし、経営を立て直す奇策、挑発ともみられる▲自宅で働く「リモートワーク」が根付いているのに、マスク氏はオフィスで働くよう促しているらしい。長時間労働といい、職場での労働といい、時代の流れの逆をいく働き方は、受け入れられるのかどうか▲日本でも「働き方改革」といわれながら、流れに逆行する例は数知れない。なかなか改まらない長時間労働があり、人手不足を補うための重労働がある▲勤労を尊び、国民が感謝し合う。きょうの「勤労感謝の日」を祝日法はそう定めるが、もともと心地よい響きがある「勤労」も、度を過ぎたら重くなる▲五行歌の歌集で見つけた。〈今日の仕事は/しんどい/頬(ほ)っぺた/ひとつたたいて/家を出る〉松本孝博(市井社「五行歌秀歌集1」から)。祝日のきょうも、ほっぺたを一つ打って仕事場へ行く人がいるだろう。(徹)

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