わずか2年で最高峰へ。ポルシェ963陣営に抜擢のイーフェイ・イェ「優勝のチャンスはある」

 2023年、WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスにハーツ・チーム・JOTAのポルシェ963から参戦することが決定したイーフェイ・イェ。22歳の中国人である彼は、シングルシーターからスポーツカーへと転向してわずか2年で、トップカテゴリーにデビューすることになる。

 11月のはじめ、イェはポルシェカスタマーチームとなるJOTAの最初のドライバーとして、起用が発表がされた。

 イェは、ルーキーだった2021年にチームWRTでELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズを、Gドライブ・レーシングでアジアン・ル・マン・シリーズを制した後、FIAのドライバー・レーティングでゴールドに格上げされ、2年目はクール・レーシングへと移籍した。

 クール・レーシングでの今季の活動は、シリーズ2位という点では実りが少なかったものの、将来のハイパーカー・ドライバーとして自分の能力を示すために不可欠であり、WRTでの1年だけでは充分ではなかったとイェは語っている。

 また今年は、イェがポルシェモータースポーツ・アジア・パシフィックと選抜ドライバーとして契約した最初の年でもあり、JOTAハイパーカープログラムとの重要なつながりも確立された。

「LMP2での初年度は、僕にとって夢のような年だったと思う」とイェは言う。

「とても成熟したチームと仕事をすることができた。しかし、今年はクール・レーシングがプロ/アマのカテゴリーから参戦したため、より高いレベルで戦うためのサポートなど、より多くの責任を負わなければならなかった」

「この1年、僕らは良いステップを遂げたし、スパでのポールポジション獲得は、僕たちが1年を通していかに進歩したかを示してくれた」

「今年は成績の面では少し劣るが、チームとともに学び、前進するという経験は、将来的にメーカーチームと仕事をする上で、より価値のあるものだ」

「僕は勝てることを示し、そしてチームとともに前進できることを示せた。ポルシェが僕に求めていたのは、この2つの側面だった」

「この2シーズンを通して、彼らはそれを確認し、僕をラインアップに加えることを決めたのだと思う」

リッキー・テイラー、ウィル・スティーブンスとともにクール・レーシングから参戦した2022年ル・マン24時間レース

 ハイパーカーのシートの可能性についてJOTAと最初にコンタクトを取ったのは、今年のル・マン24時間レースだったとイェは説明した。

 JOTAはアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、ウィル・スティーブンス、ロベルト・ゴンザレスがWEC LMP2のタイトルを獲得、2022年のシリーズを席巻した。

 ハーツ・チーム・JOTAは、まだ新しいポルシェ963のデリバリーを受けていないが、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのファクトートチームと一緒にテストに参加し、新型LMDh車両への理解を深めている。

 イェはまだLMDhを運転していないものの、セブリングでの36時間耐久シミュレーションを含む、ポルシェの最近のテストの進展に勇気づけられているという。

「新しいクルマは、信頼性で結果が決まると言ってもいいくらいだから、面白いことになると思うよ」

「ペンスキーが耐久テストを実施できたことは、来年に向けていいクルマが開発できたということを再確認させてくれた」

「フェラーリ、キャデラック、プジョー、トヨタなど、あらゆるメーカーが参戦してくるので、コンペティションという面ではすごいことになりそうだね」

「JOTAは、耐久とプロトタイプに関しては、トップクラスのチームであることを示してきた。もちろん、来年はさらに強力なチャレンジャーがやってくるので、厳しい戦いになると思う」

「だけど、とても経験豊富でスキルの高いふたりのチームメイトが、チームが素晴らしい結果を出すための手助けをしてくれると思っている。プライベートチームなので、劣勢に見えるかもしれないが、優勝争いに関しては、他のチームと同じようにチャンスがあると感じている」

2023年、IMSAとWECにデビューを飾る新型LMDh車両『ポルシェ963』

 WECのフルタイムドライバーと並行して、他のシリーズにも参戦したいと考えているイェは、ポルシェ・モータースポーツ・アジア・パシフィック選抜ドライバーとして、2年目の活動も決定している。

 中国で10年ぶりにトップカテゴリーのル・マン・ドライバーになったことについてイェは、地域のレースの才能を支援し育成するためのプログラムにとっての「良いおまけのようなもの」であると表現した。

「僕らがそれを実現できて、とてもうれしい」とイェ。

「ポルシェ・モータースポーツ・アジア・パシフィックと1年間仕事をしただけで、中国人ドライバーを耐久レースのトップクラスに昇格させることができたわけで、これは極めて良いストーリーになる」

「僕のキャリアにとって良いマイルストーンであるだけでなく、ポルシェにとっても良い業績だと思う。有望な若い中国人ドライバーをトップレースに昇格させることができるということを示しているからだ」

「彼らはカレラカップ・アジアで若い才能をサポートしている。中国の人々は、一般的にポルシェをスポーツカーのトップブランドとみなしている」

「モータースポーツは常にポルシェの最も深いDNAであり、耐久レースにおいて最大の成功を収めてきた。そのトップに中国人ドライバーがいることは、良いおまけのようなものさ」

2023年、WECのハイパーカークラスにハーツ・チーム・JOTAのポルシェ963で参戦するイーフェイ・イェ

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