【寄稿】スマスロ直前にふと思うこと(WEB版)/POKKA吉田

10月は11月の準備月間のようなイメージで理解している。スマートパチスロの登場を目前にユニットや機械本体、サーバなどの争奪戦もほぼ終わったのは10月だろう。11月21日からは各地でスマートパチスロの導入が始まる。

やはりというか、当然というか、業界の遠い将来から見ると、2022年11月21日は業界の歴史に残るような日付になるのではないか、と思っている。私が業界に入ってからのそういう日付はいくつかあるが、歴史的観点から見るとそれらを超えてエポックメイキングのような話だと評価している。

そもそもスマートパチンコがまだ封入式と呼ばれていた頃、いや、封入式という言葉すら業界巷間で認識されていなかった頃、プリペイドカード構想時の議論でのINのクリアという話は、IN・ON・OUTのクリアが究極目標であり、それを実現するためのシステムとして全く構想になかったわけではないという、私には真偽を確認する術のない話も聞いたことがある。

プリペイドカードは後のCRに衣替え?し、社会的不適合機自主撤去や前の規則のCR機の市場成熟に伴って気が付けば現金機に対するホールの需要がほぼ0という状況になり、消えていった。前の規則のぱちんこ遊技機の型式名の頭には“CR”の文字がついており、現行規則のぱちんこ遊技機の型式名の頭には“P”がついていることから「CR機がなくなってP機となった」と「誤解」している業界関係者も多いが、この名称変更を日工組が決めたのは単純に経過措置機と現行規則機を型式名から一目で見分けることができるようにするため、という理由であり、P機はすなわち今もCR機である。

と横道を逸れたが、プリペイドカード構想から長い年月を経て今も市場の主力というか市場すべてを占めるCR機はその構想段階というか源泉部分に既にスマートパチンコ的なものを含有していたのだとすると、さらに11月21日の歴史的価値は高いと言える。私が知っている範囲では、メダルレス構想の方が圧倒的に後だからだ。
海外のスロットマシンのキャッシュレス化は20年以上前から進んでいる。ゲームセンターには昔から専用筐体の中にパチスロを埋め込む形式のメダルレス態様も存在していた。また、コンシューマ向け(主に家庭用ゲーム機)のぱちんこパチスロゲームにおいては、ゲームに興じる人は遊技球もメダルも持っているわけではない。メダルレスという態様は世の中に知られているものであった。が、具体的に日電協が「これを推進しよう」としていたわけではない。

日電協が推進し始めたのは日工組がスマートパチンコ(当時はECO遊技機、管理遊技機)を強く推進しホール団体の賛同を集めようとしていたタイミングである。

つまり、構想そのものはぱちんこよりもかなり後から登場したものだ。それがぱちんこよりも先に登場するわけである。

規則改正でPSの出玉性能規制のバランスが崩壊したかのような内容になってしまった時点で6号機には不安がずっと残っていた。同じ規則のままなんとかそのバランスを持ち直すように日電協や全日遊連等が政治力にも頼りながら水面下で努力をした結果、今の6.5号機の登場まで実現してきた。

P機については今年はRe:ゼロ以降Re:ゼロを超える新機種が登場していないという点を除けば、性能規制や開発企画環境に不安を感じる業界関係者はいない。むしろ欲しい台数供給してほしい、という強気の不満が拡がっていたような状況である。

しかし6号機は中には貢献した機種もあれど、総じて業績悪化の原因となっていた。経過措置終了直後にホール法人の業績そのものが急変したという事例は全国で散見されているものであった。

それだけに不遇だったパチスロが、もちろん性能規制面で不安のないスマート遊技機としてのスマートパチスロが、ずっと古くから構想のあったぱちんこを飛び越えて先に実現するわけである。これこそがエポックメイキングだと私は考える。
スマート遊技機は、基本的にはハード構造や外部データ管理など仕組みが変わるだけであり、遊技内容そのものが変化するわけではない。ぱちんこは遊技球を入賞させて抽せんを受けてその結果を楽しむものであり、パチスロはレバーを叩いて抽せんを受けてその結果と自分で停止させた図柄表示を楽しむものである。

だが、次世代のカテゴリであることも事実だ。コロナ禍はウイルスによるものというよりも行政や世間様の風聞・視線によるものだというのが私の評価であるが、遊技球もメダルもないというのは遊技客にとって接触感染の機会を大幅に下げることができる。コロナ禍下のホール現場は遊技機の清掃業務にとにかく熱心に取り組んできたことから、ぱちんこ店は感染リスクの低い遊び場ということもよりはっきりする。

また、メダルのない遊技は、個人的にはとても楽しみである。なんといっても「楽」だ。メダルを積む楽しみがぁ、とかの視点で苦言を言う人も中にはいるが、海外のスロットマシン市場でそのような苦言が成立するのなら(やっぱりキャッシュがじゃらじゃら出てこないと面白くない!等)、今のように最先端のカジノでキャッシュレス化したスロットマシンだけ、ということはないはずである。

人は必ず楽な方に傾く。手打ちが電動ハンドルになったとき、当時のパチプロが「喰えなくなる」と嘆いたという話を聞いたことがあるが、楽になって困るのは一般的な遊技客ではないと思っている。
箱積みの魅力云々が事実であれば、今のように各台計数機は普及してはいない。もちろん、新店オープン時に特に海系の島だけしばらく箱積みにして出玉アピールをする、なんて手法が一時期流行ったが、それとてしばらくすると海の島も各台計数機になるわけだ。

遊技球が出てきたり遊技メダルが出てくること、それを箱に積むこと、重いと感じた分量がその日の「成果」ということで快感を感じるということ、これはもちろんある。というか、昔からぱちんこパチスロに興じていた人にとって長く続けてきた遊技の目的そのものである。

が、楽さの追求はそれを超えると私は考えている。今、島の外の券売機で購入して、という手間を望んでいる遊技客は皆無に近いだろう。カードはその初期、わざわざ券売機で購入しなければならなかったという記憶は、ユニットに現金を投入できるものがデフォになった現在、ほぼすべての人にとっては前時代的なものとして普段は忘れているわけだ。

もちろん、スマート遊技機が一気に市場を席巻してあっという間に既存機がすべてスマート遊技機になるわけではない。CR機も登場から長い年月を経て今に至っている。だから既存機も重要だし、今後もPSともに既存機も良い機械が出てくる可能性は普通にあるのでスマート遊技機未導入店も既存機で勝負すればいいので過度の不安は禁物だろう。だが、遠い将来かもしれないが、遊技機とはスマート遊技機のことを指すというくらいに市場すべてがスマート遊技機になったとき、その始まりはいつだったか?というと、2022年11月21日だ、ということになるわけである。

この業界で生きていく以上、賛否や導入可否、さまざまな想いはひとまず置いておいて、この歴史的な日付を業界内の人間として感じたいと思う。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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