画面をのぞけば戦国時代の一乗谷!? 10月に配信が始まった一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)のガイドアプリ「戦国時空伝 一乗谷戦国まち歩き」。拡張現実(AR)や仮想現実(VR)技術を駆使し、今では見ることのできない建物や町並みがよみがえる。スマートフォン片手に、時空を超えた遺跡散策を楽しんでみたで候。
唐門くぐると朝倉館が出現
遺跡に到着し、ダウンロードしたアプリを開くとオープニングの画面が現れた。立身出世を夢見て村を飛び出した若者が、朝倉家に仕官するため一乗谷を訪れ、出会った武人に町を案内してもらう―という舞台設定が画像と文字で流れる。県文化課のアプリ担当者、高島菜緒さんに使い方を教わりながら唐門をくぐり、5代当主朝倉義景の居館だった朝倉館跡へ向かう。
ボォーーン。突然、スマホから大きな音がした。朝倉館跡に設けられた「AR・VRリアル再現スポット」に着いたことを告げるホラ貝の音だ。歩きスマホはご法度。スマホを懐に入れていても音で知らせてくれるとは、かたじけない。
画面の「ARを表示する」をタップし、遺構へスマホを向ける。現実世界では、柱を支える礎石が整然と並ぶ風景が広がるだけだが、画面の中には1573年に織田信長軍に焼き払われたはずの朝倉館が姿を現した。今度は「VRを見る」をタップ。館にたたずむ後の室町幕府15代将軍・足利義昭が語り始め、一乗谷を訪れ歓待を受けたときの様子を教えてくれた。
AR・VRスポットは平面復原地区や下城戸などに全9カ所。アプリの地図でも確認できる。
史実に基づいたゲームで“一獲千金”
ARやVRのガイドアプリは観光地では珍しいものではないが、「このアプリはひと味違うんです」と高島さん。アプリ内で使える通貨「銭(ぜに)」の獲得スポットが遺跡のあちこちに設けられているのだ。実際に遺跡の井戸からは、信長軍に攻め込まれた時に投げ込まれたとみられる銅銭が出土している。その史実に基づいたゲーム感覚の仕掛け。
獲得できる銭の枚数はスポットによって異なる。千枚集めれば、アプリの中でつぼや木製品など出土品が描かれたデジタル絵札1枚と交換できる。絵札は15種類。希少度1からプレミアの希少度5まである。くまなく歩けば“一獲千金”を狙える。
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どんな絵札が入手できるかは、交換してみてのお楽しみ。スマホゲームの電子くじ「ガチャ」を回す感覚だ。遺跡内を歩き回り、銭集めスポットで2千枚をゲットした記者は絵札2枚と交換。片方は希少度4の絵札だった。うむ、悪くない。
武人とツーショットをパチリ
アプリのエンディング画像では、案内してくれた武人の正体が明かされる。武人と記念写真を撮れる機能もあり、画面上にオリジナルフォトフレームを起動すると、朝倉氏の隆盛を支えた名将朝倉宗滴らが現れる。記者は唐門前に立ち、カメラ位置を微調整。武人と握手しているようなツーショットが撮れた。
◇ガイドアプリ「戦国時空伝 一乗谷戦国まち歩き」 一乗谷朝倉氏遺跡活用推進協議会(事務局・福井県)が県立朝倉氏遺跡博物館開館に合わせて配信を始めた。グーグルプレイとアップストアから無料でダウンロードできる。別売りの特製VRゴーグルをスマートフォンにセットすれば、一乗谷の俯瞰した映像を鑑賞できる。