がんの疑い見落とし 川崎市立井田病院 治療開始4年半遅れ、女性患者死亡

川崎市立井田病院

 川崎市立井田病院(中原区)は24日、がん患者の診断結果が医師の間で共有されなかったため治療開始が約4年半遅れ、今年8月に80代の女性患者が死亡したと発表した。同病院の伊藤大輔病院長は「適切な治療の機会を逸した可能性がある」とし、今後は再発防止に取り組むという。

 同病院によると、女性は高津区在住。足の骨折などで2017年12月と21年12月、同病院に救急搬送され、放射線診断科医がコンピューター断層撮影(CT)検査で肺がんが疑われるしこりなどを見つけ、報告書を作成した。しかし、いずれのケースも放射線診断科医が当時の主治医に報告書の作成を伝えず、主治医も自発的に報告書を確認しなかった可能性があるという。

 女性は今年5月にも心不全で救急搬送され、別の主治医が過去のCT画像などを確認し、肺がんの見落としが発覚した。同病院はその後、抗がん剤治療を始めたが、8月27日、肺がんが原因で死亡した。

 伊藤病院長は「患者様とご家族に深くおわびしたい」と謝罪。「医師は多くの患者を抱えていることもあり、担当した患者に関する報告書を確認しないことも多い。こうした事例を二度と繰り返さないようにしたい」と話した。

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