【寄稿】騙すならうまくやれ(釘)(WEB版)/大﨑一万発

複数府県にまたがって、「釘調整」に関係したホール摘発事例が相次いでいます。新潟県では大手店の元店長が釘曲げの疑いで逮捕され、また宮城県ではホール関係者のみならず「釘学校」までもが無承認変更幇助(!)の疑いで書類送検。京都の例も「くぎ曲げしないと客離れにつながる」の見出しで一般向けにも大きく報道されており、またぞろアンチ言説が活発化しないか、パチンコ不信を招きはしないか、不安な状況でもあります。

ご承知のように釘問題は、業界にとって頭の痛いグレーゾーンであり決定的なアキレス腱ですが、同時に「業界の常識は世間の非常識」を象徴する事例とも言えます。パチンコ機を設置するすべてのホールが、本来「やっちゃいけない」手段を講じないと商売が成立しない産業。プレイヤーもそれを承知の上で(一種の共犯関係と言ってもいい)楽しんでいる娯楽……。そんな、一般社会の常識からすれば、到底信じられない「異常な状況」が長らく常態化、どころか産業を支える根幹となっているのですから。

風営法以前からそうやって商売してきたし、今さらしゃーないやん!と、いくら抗弁してもダメなものはダメ(と決められていますよね)。ここをクリアにしない限りは、根本的にグレーなイメージは拭い切れないわけですが、かといって一朝一夕に塗り替えられないこともまた業界の共通認識でしょう。当初、次世代機(スマパチ)では、釘は曲げられない素材に置き換わるなんて話も聞こえてきたものですが、結果的には現状維持のままでした。雲の上方面では、相当に高度な折衝が交わされたのであろうなと邪推もしてしまいます。

僕は、純粋にプレイヤーとしても、釘調整は「なきゃ困る」立場です。台を通した店と客の駆け引き、立ち回り術や攻略法云々はすべてが釘調整ありきで成立してきたプレイヤー文化と言えます。釘調整があったからパチンコはゲームとしての奥深さを獲得できたわけだし、運任せだけのガチャ遊びではなく、「遊技」である建前を担保する意味でも欠かせない存在。釘調整のないパチンコは、ご飯のないおにぎりのようなもので、そもそもが成立しなくなる。一連の摘発が、その根幹を揺るがす序章だとは思いたくないのですが、しかしいずれは、シロクロはっきりさせなきゃいけない時が来るのも間違いないでしょう。
その落とし所がどのようなものになるのか、いつになるのか僕には想像すらできないのですが、現状プレイヤーとして申し上げられることは、「その時」が来るまでホール様には、明らかに曲がっていると見てわかるような「素人釘」は何卒お控えくださいということです。アケるにしてもシメるにしても、わかんないようにやってくれと。いや、特日やイベントでヘソをドーンとサービスしてくれる店は大変に有難いのですけど、同時に大丈夫かしらと心配にもなってしまいます。某メガチェーン様は、関東県いずれの店舗も素人目にもわかるぐらい他穴の潰しがえげつない。写真撮られてタレ込まれるリスクは考えていないのかと心配です。

最近少なからずのホール様で、調整が雑になってきた印象は拭えません。寄せやワープをうまく触ったらこんなヘソデカくしなくてもいいのに。削るにしてもそこ曲げたらモロバレじゃん、そんな例を日常的に目にします。髪の毛一本のアケシメを競ったような調整スキルはもはや伝承されていないのか、担当者が多忙で手が回らないのか、それともイベント乱発の弊害なのかわかりませんが、商売としても遊技としても、そして文化の面でもパチンコの根幹であるはずの釘が二の次になっているように感じる。新機種情報の収集に余念ないホール様は少なくありませんが、いやいや大事なのは「何を使うか」よりも「どう使うか」ではないでしょうか?

宮城の例では捜査関係者から「くぎを曲げている店は多いかもしれないが、今回は極端に曲がっていた」とのコメントが出されています。良いふうに解釈すれば、「デリケートな問題とわかっているから見ないようにしていたが、今回は目に余ったから摘発した」と示唆しているのではないでしょうか。うーむ、ほんま頼みます。波及させないでくれ、騙すのならうまくやってくれ、建前は貫いてくれ、プロとしてのパチ屋の矜持を形で見せてくれ!素材=キカイはどのホール様も同じ、どう料理するかどんな味付けをするかで競ってほしい。素人料理なんか食いたくないですからね。

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。

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