推し活の新しい形『応援広告』って知ってる!? 推しを大ビジョンで応援してみたら新しい世界が広がっていた…!

推しを応援するためにファンが広告を掲出する『応援広告』をご存知だろうか? 日本でもかなり広まってきたこの応援広告をサポートしてくれるのが、株式会社ジェイアール東日本企画(jeki)が手掛ける応援広告事務局「Cheering AD」(チアリング アド)だ。中の人にここまでの紆余曲折を伺ってみた。

『応援広告』という言葉をご存知だろうか?

K-POPアイドル界隈や海外俳優推しなら知っている方も多いかもしれない。

まずは百聞は一見にしかず。駅や屋外ビジョンでこういった広告を見かけたことはないだろうか。

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簡単に説明すると、【応援広告】とはファンが主体となって、非営利目的で推しを"応援"する"広告"を出すこと。

誕生日祝や、コンサートやイベントの開催記念、アルバムやシングルの発売など推したい内容は多岐にわたり、広告自体も駅ばりポスターや屋外ビジョン広告を始めとして、カップホルダーイベント(※)や付箋広告(※)など様々だ。

※カップホルダーイベント…コーヒーやドリンクのカップに巻く紙製の筒のような製品。カップスリーブとも言う。オリジナルのカップホルダーを制作してカフェでドリンクを注文した人に配布してもらうイベントのこと。

※付箋広告…駅構内などに掲示されたポスターなどに、来訪者が付箋でメッセージを記入し、貼り付けるもの。たくさんの付箋が貼られたポスターには、それだけ多くの人が足を運んでくれたということで視覚的にもわかりやすい。

応援広告は、元々は韓国から広がってきた推し活の一形態である。韓国では誕生日を主に祝うことが多いのでセンイル(誕生日)広告と呼ばれている。

韓国で放映され爆発的な人気を誇ったオーディション番組『PRODUCE 101』シリーズ(※)がきっかけで広く普及するようになった。

※『PRODUCE 101』シリーズ…韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送されたサバイバルオーディション番組。101人の練習生の中から国民プロデューサーと呼ばれる視聴者の投票でデビューメンバーが決定される。

そしてこの『PRODUCE 101』シリーズの日本版『PRODUCE 101 JAPAN』(※通称:日プ 2019年放送のSEASON1ではJO1、2021年放送のSEASON2ではINIがデビュー)の開催をきっかけに日本でも徐々に広まってきている。オタクなら誰でも「俺の推しを見てくれ」──自分の推しをもっと沢山の人に見てほしい! 知ってほしい! 布教したい!と思ったことはあるだろう。

かく言う筆者もその1人だ。KPOP沼やタイ沼にも片足を突っ込んでいる故、応援広告の存在自体は以前から知っていた。そしてSNSや街中で応援広告を見る機会が増えるにつれ、漠然とした憧れはもっていたものの、実際の費用面や手間などを考えると難しい……とも感じていた。

だがしかし! そんな筆者にも一大転機がやってくるのである。

Twitterスペースで友人たちと推し語りを展開していたとある週末の昼下がり──。「そういえば、某月某日って、○○記念日なんですよ」

「えっ、そうなんだ! なんかお祝いしたい!」

「ですよねー! 皆で集まってお祝いもしたいんですけど、なんかこう形に残る思い出を作りたいんですよね」

「それもそうだね! もっと推しを布教したい! 全世界とまでは言わないけど街を歩く人にアピールはしてみたい!」

(ハッ!)

「「「……応援広告……やり、たい!!」」」──とまあ、こうして筆者は推しの応援広告を実施することに。

そしてこの応援広告で筆者が非常にお世話になったのが、株式会社ジェイアール東日本企画(jeki)が手掛ける応援広告事務局「Cheering AD」(チアリング アド)だ。

個人での広告出稿が難しい日本において、媒体社との調整や枠取りなどを手配してくれる広告代理店は必須であり欠かせない存在でもある。

今でこそ知名度も上がり、週末には見かけない日はないほどの勢いのある応援広告だが、実際このように普及するまでにはどんな紆余曲折があったのだろうか?

「Cheering AD」の中の人に話を伺った。

「どうしてファンが広告を出すの?」理解されるまでが大変だった

──まずは『Cheering AD』設立のきっかけについて教えてください。

jeki河原氏(以下、同) 私、元々KPOPファンなんです(笑)。それでセンイル広告(応援広告)を日本でもずっとやりたいと思っていたんですね。

日本だと権利関係が厳しいのでなかなか広まるのが難しかったのですが、突破口を開いたのが「PRODUCE101 JAPAN」でした。

韓国でも応援広告が広まったのは「PRODUCE 101」シリーズだったのですが、日本版(日プ)でも同じく応援文化をそのままに展開してくれた。練習生の写真やロゴを公式側が提供して、応援広告に使っていいよと。

でも日本の場合はどうしても間に広告代理店が入らないと広告が出せないので、応援広告をやりたいんだけど皆さんどうしたらいいのか結構困ってらして。

なので最初は個人的に「その部分お手伝いできますよ」という感じで始まったんです。

最初は「応援広告」っていう言葉もなかったので、とにかく理解してもらうまでが大変でした。

やはり広告って販売促進が目的だという認識が一般的。社内も社外も、そもそも「どうしてファンが広告出すの?」というところから説明していかないといけない。──儲かりもしないのにどうして?と。オタクにしてみれば多少お金を出してでも推しをアピールするチャンスが有るのは嬉しいですが。

そういった初期の頃から考えると、今ではかなり一般的になってきたと感じます。

2020年に新規事業企画の募集があって、社内のオタク仲間と応援広告の企画でエントリーしたのですがその時はダメだったんですよ。でも少しずつ実績を積み上げていって、ようやく2022年に「Cheering AD」として正式にスタートしました。

広告出稿だけであれば会社として実績も経験も十分にありますが、やはり対企業でのBtoB事業がメインなので、応援広告のようなBtoC事業というのは会社としてもあまりないので挑戦なんですよね。

その点を心配されることもありますが、頂いたご意見を反映しながらこれからも実績を積み上げていければと考えています。──JR東日本企画という社名もあって、やはり交通広告に強いのかなと漠然とイメージしていたのですが。

社名のせいか、「JRしか広告出せないんですか?」っていうお問い合わせをよくいただきます(笑)。

日本全国どこでも出せますし、JR以外の電鉄や屋外広告の取り扱いもできます! むしろ出せないところのほうが少ないです!

JRグループである強みを生かして、ルミネなどの駅ビルでのカップホルダーイベントなども可能です。

応援広告用のメニューの開発もしていまして、そのうちの一つが『付箋広告』です。

日本の場合は、通行の妨げにならないかとか安全面はどうかなど、かなり厳しいハードルがあったのですが、媒体社側と調整して開発、実現できたメニューですね。

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──付箋広告は壮観ですよね! それでは、応援広告の中で一番人気のメニューは?

件数として一番多いのは、駅ばりポスターですね。

それほど価格も高くないので、手が出しやすいのかもしれないです。

次に屋外ビジョンです。新宿のユニカビジョンやクロスビジョンは人気ですね。ユニカビジョンはもう応援広告の聖地みたいな感じになっていたり。

応援広告が広まってきたのもあって、人気の場所も出来てきたりしています。東京メトロの新宿駅から新宿三丁目をつなぐ地下通路は、駅ばりポスターの中では人気の場所ですね。

──確かによく見かけますね! SNSを見ていると、全国規模で応援広告が展開されているものもあったりして、規模もすごく拡大しているなと思います。

そうですね。やはりKPOPから発生してきたというのもあるので、ファンダム文化というか応援広告に参加するファン数も多いですし、規模も大きくなっていますね。──実際2次元のキャラと3次元のアイドルや俳優などと、どちらの応援広告が多いんですか?

もともとKPOPファンから始まったという成り立ちもあって、3次元が多かったんですね。

特にJO1やINIといった日プ出身のグループは、事務所や権利元自体が応援広告での利用を認めていて、素材も提供しているので実施しやすい。同じくオーディション番組出身のBE:FIRSTも同じように応援広告用の素材を提供しているので実施が増えています。

にじさんじさんとの応援広告の取り組み(※)を始めてから、2次元キャラや声優などの問い合わせや実施も増えましたね。

※「Cheering AD」では、VTuber /バーチャルライバーグループ「にじさんじ」の応援広告を受け付けている。

ハードルはやはり権利面が一番難しい。もっと応援広告が広まれば……?

──応援広告を出そう!と考えたときに、やはり一番ハードルが高いのは権利元の許諾を得る部分かと思うのですが。

そうですね。事務所が正式に許可を出しているところはまだまだ少ないですね。

どこに問い合わせたらいいのかわからないというお客様もいるので、権利元への許諾の申請代行もサポートしています。

実際のお申込みの8割ぐらいは許諾の申請代行からやらせていただいてます。

やはり所属事務所側でNGが出るケースだったり、写真の使用はダメ、イラストならOKといったケースもあるんですね。

こうしたルールが応援広告が広がらない理由の一つだとは思うので、もっと応援広告というものを知っていただいて、日本でももっと気軽に利用できるようになればいいなと頑張っています。

「Cheering AD」では、応援広告の実施のサポートや媒体社側と調整して新しい応援広告のメニューを企画したりといったところはもちろん、応援広告の普及のための取り組みにも力を入れています。

にじさんじとの取り組みを始めたときも、そんな応援の仕方があるのかってそこで初めて知っていただいた方も多かったんですね。

──確かに、応援広告というとKPOPというイメージがあります。

そうですね。特に男性は知らない方も多くて。もう「応援広告とはなんぞや」というところから説明しないと分かってもらえない。

社内でも「なんで自分がお金出して広告出すの?」というところから「このWEB全盛の時代に何故交通広告がいいの?」とか「もっと知ってほしいならCM打てばいいじゃないか」といった意見もありました。

──そうじゃない! そうじゃないんだ……! でも伝わらない(笑)。

なかなか難しいところですね。日プがなかったらこんなに広まってないと思います。

ただ、応援広告ってすごくSNSと相性がいいと思っているんです。

──確かにSNSでよく見かけますね。自分がやってみて思いましたが、余すところなく撮りたいし、SNSにアップして皆に見てほしいですもん。

皆さん「行ったよ」ってSNSでアップしたり、アクスタと一緒に撮影してくださったり、駅ポスター1枚だとしても必ず見に行って投稿してくださる。そういった面で応援広告の認知が上がっていってるなと思います。

推しへの情熱があればOK!? 応援広告って意外と難しくない

──では、応援広告をやりたいと思っている方に向けて、実際のノウハウを伺いたいと思います。まずスケジュールなのですが、どれくらいの期間を見ておけばよいでしょうか?

一番時間がかかるのが許諾を得る部分なので「Cheering AD」で許諾申請を代行する場合は2ヶ月、余裕を持って3ヶ月前ぐらいにお問い合わせいただけるとベストです。

──なるほど。金額的にもお手頃と言うか、数十万~数百万円の規模でかかるのかなと思っていたら、10万を切る価格で実施できたりして意外と安いなと思いました。

広告金額自体は公式サイト内にも記載していますが、そんなに手が届かないほど高い金額ではないんですよね。

──応援広告って、金銭面もそうですが、権利の許諾だったり広告素材の制作だったりってかなりハードルが高いのではないかと思っていましたが、感想としては本当に意外と簡単に出来たなと。これくらい簡単なら次の記念日にもまたやろうかなと思えるほどでした。

そうなんです。「Cheering AD」の目下の目標は「応援広告は簡単にできる」ということを如何に伝えていくか、にあります。──素材制作については、なにか覚えておいた方がいいルールや制約がありますか?

まずは、広告内に必ず団体名と連絡先(メールアドレス等)を入れること。これはビジョン広告でもポスターでも同じで、必ず対応していただきたいポイントですね。

駅ばりのポスターだと、個人を特定できる名前(SNSアカウントも含む)を記載することがダメな場合もあります。媒体社によっても違いますし、なるべく皆さんのやりたいことが実現できるように「Cheering AD」でも対応していきたいと思っているのでお気軽にご相談ください。

──今回自分でも実際に実施してみて、達成感が半端なかったです。次は○○記念で出そう、なんてもう次回の企画を考えたり。

本当に、想像していた以上に応援広告って簡単に実施できます。

何かを推したい!と思ったときに新しい応援方法の一つとして検討していただけると嬉しいです。

実録!応援広告ができるまで

それでは最後に、実際に筆者が体験した応援広告を出稿するまでの流れを簡単にまとめておこう。

新宿ユニカビジョンでの応援広告の例(2022年秋時点)なので参考にする場合は留意されたい。

●実施2ヶ月前

企画立ち上げ。主催3名で、会計・SNSなどの告知周り・渉外と素材制作と大まかな役割分担を決めた。

応援広告への参加希望数把握のためSNSでアンケートを実施。

「Cheering AD」へ問い合わせ。

入金(※)・納品日(※2)から逆算して、寄付金の募集スケジュールや素材製作などのスケジュールを決定。

※広告枠の確保は入金後。今回の場合は、入金は実施1ヶ月前まで

※2動画素材は、放映3週間前までに意匠審査を受ける。その後放映10日~1週間前までに入稿となるので、実施日の1ヶ月前にはある程度出来上がっていないと厳しい。

●実施1.5ヶ月前

アンケート終了、費用の目処がつき正式に申込み(媒体社による団体審査を受ける)

SNSで寄付金の募集を開始

団体審査承認、入金が完了し、広告枠の確保完了

広告用動画制作

●実施1ヶ月前

意匠審査用動画提出

※修正などがあった場合を考えて締切よりも早めに提出した

事前告知用SNS投稿内容審査

●実施2週間前

会計報告資料作成

本番用動画入稿

●実施日「うちの推しを見てくれ!」

▲実施日当日の模様。大画面で見る推しは本当に最&高!この日は他にも応援広告が実施されており、見に来るファンたちも多かった。

▲中の人に気持ちが届くことも。こちらこそありがとうございます。

推し活の新しい形「応援広告」

街中で、駅で、カフェで、本当によく応援広告を見かけるようになった。

今まで知らなかったという人でも、ちょっと意識を向けてみればすぐに分かるだろう。

動画やポスターは、いい意味で商業的な匂いが少なく推しへの愛に溢れていて、見ているこちら側も「頑張ってね!」とエールを送りたくなる。

なによりビジョン広告の大画面に映し出される推しは本当に本当に素晴らしくて最&高!(語彙力)。

ぜひこの気持を一度味わってみてほしい。

取材協力:応援広告事務局「Cheering AD」

https://www.jeki.co.jp/cheering_ad/

応援広告 Cheering AD|jeki(株)ジェイアール東日本企画

Cheering ADはジェイアール東日本企画が運営する応援広告事務局です。電車や駅、街など好きな場所に、好きな方法で応援広告を出したいあなたを全力でサポートします。

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