【考・九州男児】「愛すべきダメ男」九州出身者でつくる在京劇団「男魂」

宮崎市出身の黒木俊穂さん(左から2番目)ら、九州出身者らでつくる劇団「男魂(メンソウル)」のメンバー。毎回「愛すべきダメ男」を公演のテーマに据えている=東京都中野区

 東京・中野を拠点に活動する劇団「男魂(メンソウル)」は、文字通り男だらけのメンバー7人のうち6人が九州沖縄の出身だ。九州男児を自負し、稽古後の飲み会を愛しつつ、2003年の旗揚げから毎回「愛すべきダメ男」を公演の中心テーマに据えてきた。
 劇団主宰の杉本凌士[りょうじ]さん(51)=人吉市出身=は「お酒に強いと言いつつ酒にのまれる…。周りに迷惑をかけてもどこか憎めない男っているじゃないですか。そんな等身大の姿が九州男児にあってもいいし、そのほうが共感されやすい」とニヤリ。「自分のおやじもそうでしたよ」
 正義感が強い、負けず嫌いで熱い-。九州男児について脚本・演出する際に、見る側から求められるイメージは決まっている。九州の方言はそれらを際立たせてくれる。ただ、「そうありたいと願う男性の思いを周りがどう受け止めるかによってイメージは大きく変わるでしょうね。だからこそ“愛すべき”が大切なんです」と語る。
 演じるキャラクターから「愛すべき」の一語を奪った途端に、男尊女卑や亭主関白といったマイナスのイメージが浮かび上がる可能性があると言う。
 6人は30~50代と年代も出身県もバラバラだが、上京前までは「自分自身が九州男児だという認識はあまりなかった」と口をそろえる。九州の男性をひとくくりにした表現は、九州の外からの捉え方だと強く感じている。
 鹿児島県南九州市出身の中武億人[なかたけおくと]さん(33)は「こういう仕事をしているせいか、求められる九州男児のイメージに合わせようとしている自分がいた」と振り返る。宮崎市出身の黒木俊穂[としお]さん(45)は「福岡、熊本、鹿児島の“九州センターライン”は九州男児かもしれないけど…。(宮崎県出身の)永瀬正敏さんや堺雅人さんなんてイメージと程遠いのでは」。
 「(福岡県出身の)高倉健さんや武田鉄矢さんが全国で九州男児のイメージを向上させた功績が大きい」
 メンバーから、そんな声も上がる中、福岡市出身の坪内守さん(48)は「九州の女性って、外では男の人をかっこつけさせてくれる気がしますね。東京ではそうはいかない」と一言。
 「九州の女性に甘えているのが九州男児かもしれない」。そう笑うと、全員が大きくうなずいた。(熊本日日新聞・立石真一)

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