3年ぶりに開催!2022年「にしてつ電車まつり」レポート

2022年10月16日(日)、西鉄の筑紫車両基地で「第27回にしてつ電車まつり」が開催された。3年ぶりとなった今年の会場の様子をレポートするために、N×編集部は現場へ向かった。

「にしてつ電車まつり」とは?

「にしてつ電車まつり」とは、西鉄が主催する鉄道イベント。日本で初めて鉄道が開業したことを記念して制定された10月14日の「鉄道の日」にちなんだお祭りで、西鉄では年に一度開催している。

全国の鉄道会社もこの時期にイベントを開催することが多いので、鉄道ファンはどのイベントに参加するか、スケジューリングがとても重要になる。

新型コロナウイルスの影響で直近2年間は開催が見送られていたので、今年は3年ぶりの開催となった。

会場は、西鉄天神大牟田線・筑紫駅近くにある「筑紫車両基地」(筑紫野市)。普段は入れない車両基地に行くだけでもテンションが上がる! そうしてワクワクしながら迎えた当日。

筑紫駅から徒歩約10分。開場1時間前の9時に集合した我々を待っていたのは、長蛇の列だった!

現地の西鉄社員に聞いてみると「例年より人出が多い」とのこと。3年ぶりの開催ということで、やはりみんな気合いが入っているのか!

「にしてつ電車まつり」一番乗りにインタビュー

行列の先頭にいた男性に話を聞いてみた。

おはようございます。今日はどちらから?

(男性)
大阪からです。

ええっ、大阪?! 前日から?

(男性)
はい。昨日新幹線で博多まで移動してきました。

今日は何時にここに着いたんですか?

(男性)
朝4時ごろからです。

よ、よ、4時?!

(男性)
後ろの男性グループも、ぼくのすぐ後に来られましたよ。

す、すごい。今日のお目当ては何ですか?

(男性)
もちろん物販です。方向幕(車両に設置された行先を表示する幕)を狙っています。

何ということだ。さっそくハイレベルな鉄道ファンに出会ってしまった。この日、全国の何十もの鉄道会社が「電車まつり」を開催するなか、「西鉄」を選んで来ているということか。想像以上にすごいぞ「にしてつ電車まつり」!

いざ「にしてつ電車まつり」会場へ

当日配布される会場内MAP

当日は筑紫駅と会場を結ぶ無料の送迎バスも走行していて便利! 会場に着くと入口でMAPがもらえるので、どこでどんな催しがあるか最初にチェックする。

会場に入ると西鉄沿線の魅力を紹介するPRブースがあり、新宮町、久留米市、筑後市、朝倉市、大牟田市が参加していた。こうして地域と連携して会場を盛り上げるのも、公共交通を担う西鉄の大切な役割だ。

その他、西鉄電車のオリジナルグッズのほか、南海電気鉄道や島原鉄道、京急電鉄、福岡市交通局、筑豊電気鉄道などのグッズも販売されている。

注目の車両展示。今年の目玉は、災害や事故などの際に機材の運搬などを行う「救援車」と、夜間線路の補修作業をする「マルチプルタイタンパー(通称マルタイ)」。普段はなかなか目にすることのない珍しい車両だ。

救援車
マルタイ

定員12名の西鉄ラグジュアリーバス「GRANDAYS-グランデイズ-」は車内見学OKで、多くの人が詰め掛けていた。

物販コーナーは西鉄電車レアアイテムの宝庫

注目の車両部品販売コーナーはこちら。西鉄には毎年数両廃車になる車両があり、その部品が販売されているそうだ。

車号番やつり革、「禁煙」などの車内各種名板が並んでいる。先ほどの男性が目当てにしていた方向幕も数本ある!

最高額商品は車号番セット(5006・5007編成)の各30,000円。これが高いのかどうか、素人にはまったくわからない……!

実は3年前までは、車両部品のオークションが開催されていた。最高額の商品は20万円で落札されるなど、現場はかなり白熱していたとか。今回はオークションではなく、定額での販売のみ。その理由を物販コーナーの西鉄社員に尋ねた。

「本当は廃棄もしくはリサイクルされる部品なので、高額で売るのはなんだか申し訳なくてですね……」

ああっ、なんとやさしい……!

廃車車両に関する商品のほか、さらに奥のテントにも物販コーナーを発見。こちらには、8月に実施された西鉄天神大牟田線の高架化工事で出てきた商品が並んでいた。高架化工事も一晩中付きっきりで見守っていたので、ちょっぴり切ない気持ちも……。

「ハンガー」(300円)や「碍子(がいし)」(500円)、「レールスライス」(1,000円)といった専門的なアイテムが多く、見ただけではどう使われているか、これまた素人にはまったくわからない世界。最安値商品は「ナット・ワッシャー付き継目ボルト」(50円)だった!

午前9時45分ごろ、定時より早めに開場。入口でインタビューした男性のお買い物を見届けるために、物販コーナーへ移動。すると、みなさんは到着順にきちんと列に並んでいる。公正を期すために、4人ずつ入場する決まりだとのこと。

「にしてつ電車まつり」の物販を極める鉄道ファンに密着

午前10時、物販待ち1組目が車両部品販売コーナーに入る。1組当たりの時間は約5分。その短い時間内で何を購入するか決めなければいけないので、売り場には緊迫した雰囲気が漂っている。

商品について積極的に質問し、情報を集めながら目星をつけていく4人。その姿は紛れもなくプロ。鉄道ファンのプロフェッショナルだ。

制限時間が終わり、1組目のお買い物タイム終了。商品をゲットした直後のみなさんにインタビューをした。

大阪から来た運転士志望の専門学生

最初に話を伺ったのは、行列の先頭にいた大阪から来た男性。

目当ての方向幕は?

(男性)
買いました。でも実は、本来狙っていたものとは違っていて……。

本当はどんなものが欲しかったんですか?

(男性)
幕を動かす機械付きの方向幕が欲しいと思っていたのですが、今年は方向幕のみでした。下手に手で巻くと痛んだり破れたりするので、これは自宅できれいに保管しておこうと思います。

来年に期待ですね。ちなみにお兄さんは、普段は何をしている方なんですか?

(男性)
今20歳で、運転士になるための専門学校に通っています。小さい頃から鉄道好きで、時間があれば全国の鉄道まつりに参加しています。最初は新幹線の運転士になりたかったのですが、鉄道の魅力を知ってしまうと電車の運転士もいいなぁって思いますね。

なんと、運転士志望! ぜひ西鉄の運転士になりませんか。方向幕のほか、車合板を購入したお兄さん。たくさんお話を聞かせてくれてありがとうございました。

他にはこんなファンも

お父さんは西鉄バス運転士

男の子は現在小学6年生で、「生まれた時から電車好き」(byお母さん)だとか。西鉄オリジナルのTシャツがよく似合ってる!

購入したのは高架化工事物販コーナーの「曲線標(※)」(300円)。これならおこづかいでも買えるけど、どこに飾るんだろう! このあとは体験型のイベントにも参加したようです。

※曲線標:線路のカーブの始点と終点に設けられる標

「にしてつ電車まつり」は体験型コンテンツもすごい!

物販の勝者たちにインタビューした後は、会場内の体験コーナーへ。

■車両洗浄機体験

車両洗浄機体験では、電車の車内に乗った状態で洗浄の様子を体験できる。列車が洗浄機に入るとバンっと音がして、ガラスや車体がきれいに磨かれた状態に。

■運転シミュレーター

実際の運転席に座り、天神大牟田線の映像を見ながら3駅分・10分間の運転体験ができる。運転は現役の運転士がサポート。子どもたちが夢中で運転する姿がかわいい!

■車掌体験

小学生以下の子どもを対象にした「車掌体験」では、扉操作や車内アナウンスが体験できる。

子どもたちの声のアナウンスは新鮮! 本物の車両のベルやマイクで、車掌さんと一緒に仕事をする様子が微笑ましい。

■踏切非常押しボタン体験

踏切内に異常を発見した時に押す非常停止ボタン。緊急時以外押すことはないのでちょっとドキドキ。ボタンを押すと線路上のサインが点滅する。

■ミニ電車の運行

3000形をモチーフにした子ども用のミニ電車を広場で運行。イベント開場からずっと行列! ゆっくり走るので記念撮影はブレなくバッチリ。

西鉄電車の筑紫工場内に潜入

にしてつ電車まつりでは、検車場を除くすべての工場施設を開放している。係員による解説やパネル展示で、電車の仕組みや工場の役割を知ることができる。

移動式天井35tクレーン実演

電車の車体の移動や、電車屋根上のパンタグラフや冷房装置の取り付け・取り外しなどに使われるクレーン。安全のために無線によるリモコン操作で作業する。

パンタグラフ動作試験体験
方向幕の展示
防音圧延車輪と普通圧延車輪の違いを比較できる

工場内のステージではゆるキャライベントも開催された。われらがnimocaのフェレット&西鉄バス公式キャラクターのババ・バスオも登場!

ゆるキャライベント終了後は廃車になる車両にメッセージの寄せ書きができるイベントが行われた。子どもたちのかわいいイラストに紛れて、哀愁たっぷりの大人のメッセージもいくつか発見。

「ありがとう西鉄電車」なんて、うれしくて感動するなぁ。

「おうちでにしてつ電車まつり」も開催

会場でのイベントのほか、オンラインで楽しめる「おうちでにしてつ電車まつり」(11月20日まで)も実施。高架化切替工事の様子を動画で配信するほか、西鉄電車の人気ナンバーワンを決める「第2回にしてつ電車総選挙」も開催された(投票は10月末までで終了)。
https://www.nishitetsu.jp/train/trainfestival2022/

投票の結果、ナンバーワンに選ばれたのは「3000形」!

地域に暮らす人とのつながりをつくる「にしてつ電車まつり」

帰り道で、高架化工事の取材でお世話になった山口さんを発見。先日は工事の現場だったが、今日はイベント会場で。西鉄の社員って本当にいろんな現場に出向くんだな~。
高架工事の記事はこちらから!↓
https://nnr-nx.jp/article/detail/18

開場前の行列にはじまり、オープン早々の車両部品販売コーナーの熱気や楽しそうな家族連れの姿。西鉄筑紫車両基地はたくさんの笑顔に包まれていた。

電車まつりの担当者に聞いたところ、「西鉄のファンになっていただきたい」「地域とともに歩んでいきたい」という思いから、毎年「にしてつ電車まつり」を開催しているそうだ。確かに、この日1日現場にいると電車に間近で触れられて、西鉄電車がさらに好きになった!

普段あまり姿を見ることのない工場勤務の技術者も内勤のスタッフも、この日は社員総出でお客さまを迎える。「にしてつ電車まつり」は、地元の住民や西鉄電車の利用者に直接感謝を伝えることができる重要な機会だからだ。

同時に、工場見学や体験型のイベントを通して地域の住民へ「安全・安心」を伝えるチャンスでもある。お客さまを目的地へ運ぶ仕事は、命を預かることに等しい。だからこそ、地域住民と安全への取り組みを共有することが、公共交通を担う西鉄の使命だと言える。

今日も安全を第一に、地元で暮らす人々の暮らしをより便利で快適にするために。公共交通を通して一人でも多くの人の笑顔を生み出せたらいいなと、あらためて実感した1日だった。

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