秋の山寺、葉が落ちる…底見えぬ政権危機 「増税」「疑惑」火消しも与党嘆息

衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=25日、国会内

 物価高騰対策などを盛り込んだ第2次補正予算案の審議が25日から衆院予算委員会で始まった。岸田文雄首相だけでなく、与党議員も防衛費を積み増す財源の不透明さや閣僚を巡る公職選挙法違反疑惑などの火消しに必死。増税を示唆した首相直轄の有識者会議の意見書を「参考に過ぎぬ」と突き放すなど、政権全体に危機感がにじんだ。

 苦境に立つ岸田首相にとって、予算委は追及を受けるだけでなく、逆に政策や実行力をアピールする場にもなり得る。首相は周囲に「国民の理解を得る」と意気込んでいたという。

 対する立憲民主党の泉健太代表は「29兆円規模でも、財源は国債での借金23兆円」「うち8.9兆円は基金への積み増しで国民生活への助けにならない」などと背景を丁寧に説明。さらに同党の大西健介氏は「分配推進の主張が立ち消え、所得倍増がいつの間にか防衛費倍増となり財源も不透明だ。所得税や医療費などの負担が増える一方で、年金も減額されるかもしれない」などと畳みかけた。

 割って入ろうと繰り返す挙手を取り合わない泉氏らに首相はいらだちを隠せず、答弁機会を得ると「なかなか発言の機会を与えられない」と不満を口にし、「基金が景気対策にならないなどという指摘は当たらない」「増税を政府として議論はしていない」などと語気を強めて反論した。

 「政府の指針ではなく、参考文献に過ぎない」。与党のトップバッターで質問に立った自民の赤沢亮正氏は、政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が22日に首相へ提出した報告書を「参考」と断じた。報告書が増税の可能性を示唆して批判を招いていることから、距離を置こうとしたとみられる。

 岸田首相は配慮に支えられつつ、赤沢氏ら与党議員とのやりとりで「物価上昇に負けない賃上げに取り組む」などと答弁。景気回復重視の姿勢をアピールしたが、野党からは「所得倍増が所得税増に化ける」「賃上げが先行しないと対策にならぬ。順序が逆だ」などのヤジで逆襲を浴びた。

 大西氏からは秋葉賢也復興相、山際大志郎前経済再生担当相(衆院神奈川18区)、寺田稔前総務相、葉梨康弘前法相という疑惑を抱えた4人の頭の漢字をとって「秋の山寺、葉が落ちる」とやゆされた。

 週明けに再開される予算委で質問に立つのは野党委員が中心。底が見えない政権の危機に、自民の閣僚経験者は「山寺の葉が落ち冬だからもう秋はいいでしょう…とはいきませんよね」とため息をついた。

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