南島原の自転車歩行者専用道路 批判相次ぐ 事業費10億円増、全線開通1年遅れ…

橋りょう工事が進む市自転車歩行者専用道路=南島原市南有馬町

 長崎県南島原市が島原鉄道・旧南線の廃線跡地に整備している「市自転車歩行者専用道路」(旧加津佐駅―水無川手前・約32キロ)の全線開通が当初計画から約1年遅れの2024年度となり、総事業費も10億円増の約45億円に膨らむことが25日分かった。老朽化したトンネル補強など追加工事が発生したのが原因だが、市民から「見通しが甘い」と批判が相次いでいる。

 市は19年11月、自転車活用推進計画を策定し、28年度末までに市内全域が対象の自転車ネットワークを整備する方針。中核に位置付けているのが同道路。通勤・通学や災害時の避難道路など市民の利便性を高め、サイクリング客を誘致し、交流人口を増やす狙い。
 国の補助事業の社会資本整備総合交付金と地方創生道整備交付金を活用して事業化。総事業費は約35億円(うち市負担は約5億円)。19年度に着工、23年度の全線完成を目指していた。今年9月、口之津町の一部(約380メートル)で供用開始した。
 しかし、同道路沿いに点在する急傾斜地の補強、老朽化した橋やトンネルなどの改良工事が新たに必要であることが判明。地元建設業者の手持ち工事が多く、同道路関連の入札不調が相次ぎ、工事が遅れている。市幹部は「国の交付金を活用し、市の持ち出し(公金支出)を1、2億円程度に抑えたい」と話す。
 一方、本県の自転車保有台数は1世帯当たり0.55台で全国最下位(18年、自転車産業振興協会調べ)。市内の未保有世帯は約46%(19年市調査)に上り、同道路整備に対する市民の賛否は分かれている。
 「コロナ禍でサイクリングは全国的に人気だけに、南島原観光のランドマークになる」(40代農業男性)と期待する一方で、「高齢化率が4割超す中山間地域に必要な道路なのか」(70代主婦)と首をかしげる。
 西有家町の50代男性会社経営者は「今になって事業をやめたら、それこそ“負の遺産”になる。市の持ち出し分を道路完成後にどう回収するのか。市長は自転車歩行者専用道路の活用策を明確に示してほしい」と要望した。
 市議の一人は「事業費の増大は想定内。昨秋稼働した新学校給食センターも事業費が倍増するなど公共事業の見通しが甘い。(同道路も)工期が遅れ、事業費はさらに膨らむのではないか」と疑問を呈している。


© 株式会社長崎新聞社