黒磯北中事件の記録も廃棄か 宇都宮家裁、少年事件の特別保存なし

宇都宮家裁

 重大少年事件の記録を各地の家裁が廃棄していた問題で、宇都宮家裁では事実上の永久保存となる「特別保存」に指定された少年事件の記録はないことが25日までに、同家裁への取材で分かった。那須塩原市の黒磯北中で1998年、男子生徒が教諭をバタフライナイフで刺殺した事件に関する記録も、特別保存に指定されていなかった。事件記録の廃棄時期を記した「少年保護事件簿」は廃棄されており、事件の記録自体も既に廃棄された可能性が高いとみられる。

 最高裁の内規では、一般的な少年事件の捜査書類や審判記録は少年が26歳になるまでの保存を規定。一方、再審に備え保存が必要な場合や史料的価値が高い記録は、期間満了後も特別保存することになっている。

 同家裁によると、これまでの同家裁の少年事件で、特別保存に指定された記録はない。当時、全国的に耳目を集めた黒磯北中事件も含まれていない。理由は「不明」という。

 黒磯北中事件の発生は98年で、通常の保存期間は既に過ぎている。事件を受理した年度ごとに廃棄時期などを記す少年保護事件簿も、20年の保存期間を過ぎ廃棄されている。事件記録自体について同家裁は「あるのかないのか、分からない」と回答した。

 少年事件の記録の廃棄状況について、同家裁の担当者は「現在、独自の調査などは考えていない。今後は最高裁の指示に従う」と話している。

 全国の家裁では重大少年事件の記録の廃棄が相次いで判明。神戸市で97年に起きた連続児童殺傷事件や、長崎県佐世保市で2004年に小学6年の女児が同級生を殺害した事件などの記録も廃棄されていた。

 最高裁は10月、全国の裁判所に全裁判記録の廃棄の一時停止を指示。記録保存の運用については25日、有識者委員会で検証が始まった。

 【黒磯北中事件】那須塩原市の黒磯北中で1998年1月、1年生の男子生徒=当時(13)=が女性教諭=当時(26)=に注意され、胸や背中など7カ所をバタフライナイフで刺すなどして殺害した。宇都宮家裁は最終的に、生徒を医療少年院送致の保護処分とした。この事件後、全国で刃物などを凶器にした中高生による事件が相次いだ。

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