新大工町ファンスクエア誕生・『にぎわい』 人流減少も今後に可能性

ライオンズタワー新大工町のラウンジから見える新大工町エリア。中央に通るのが商店街=長崎市新大工町

 長崎市の再開発ビル「新大工町ファンスクエア」の上階「ライオンズタワー新大工町」。24階の入居者専用ラウンジからは市街地を一望できる。足元には同町商店街や、長崎くんちで知られる諏訪神社が見えた。
 事業主によると、ビル開業時で240戸の約7割が売却済み。今年夏近くに別のマンション(39戸)も建ち、一帯の人口増加が見込まれる。
 「(入居者に)『なんか商店街があるばいね』じゃなく、『商店街に住んでいるんだ』と興味を持ってもらえるようアピールしなくては」。同町商店街振興組合青年部の井上正文会長(45)はこう気を引き締める。
 「市民の台所」の往時を知る同町商店街関係者は「盆と正月は、人がすれ違うのに苦労するほどだった」と口をそろえる。だが、長崎商工会議所の調査によると、1977年に平日1万4千人を数えた通行量は、減少傾向をたどり、2021年には6千人余りにとどまった。長崎玉屋ビルの建て替え中、新型コロナウイルス感染拡大による行動規制や消費低迷も追い打ちをかけた。
 近年はJR長崎駅周辺や臨港部、市郊外でそれぞれ商業開発が進むにつれ、中心市街地の空洞化が指摘されるようになった。
 このため市は12年から、中心街の回遊性を高める「まちぶらプロジェクト」に着手。「駅周辺は玄関口、まちなかは母屋」(田上富久市長)と捉え、旧居留地の大浦地区からアーケードのある浜町、新大工町地区までの一帯で、それぞれの個性を生かした魅力向上策を推進している。このうち新大工町では「商店街・市場を中心としたふだん着のまち」と銘打ち、ファンスクエアは「先陣を切る動き」(市担当者)。市は共有部分の広場整備費など約58億円(国県費含む)を助成した。
 市南部で洋菓子店を営む萩田実氏(55)は、長崎駅前のアミュプラザ長崎でも別店舗を営業しているが、「面白いエリア」と可能性を感じファンスクエアへの出店を決めた。
 来年1月には、市役所庁舎が市民会館電停前に移転。新大工町電停から2駅の位置で往来しやすくなり、同町の人流が増えると萩田氏は予測する。近くの諏訪神社が初詣でにぎわうなど、季節によって人や物の動きに変化もある。こうした他の商業エリアにはない地域特性が、萩田氏の背中を押した。
 「周辺の商店街が再開発を考える機運につながるのではないか」。こう分析するのは市商店街連合会の本田時夫会長。浜町地区の再開発に関わる立場としても「新しい施設ができて、おのずと人の流れもできてくる。新大工町と浜町をつなぐ線がより強いものになれば」と相乗効果を望む。


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