「JTの森 鯉が窪にいみ」2022年秋 森林保全活動 〜 高梁川源流域での森を守る活動を体験

倉敷市を流れる一級河川「高梁川(たかはしがわ)」。

花見山(標高1,188メートル:新見市)を源流としており、新見市では高梁川の豊かな水環境を支える森林の水源涵養(すいげんかんよう)や土砂流出防止の機能をさらに発揮させるための森林整備を行なっています。

下流域に住む倉敷市民などは、その恩恵にあずかっているともいえますが、「高梁川の源流域がどんなところなのか見たことがない」かもしれません。

倉敷市に30年以上住んでいる筆者もその一人で、新見市に足を運んだことはあっても、ほとんどは市街地に留まっていました。

日本たばこ産業株式会社(以下、JT)が新見市と協働で取り組んでいる「JTの森 鯉が窪にいみ」で、2022年11月19日(土)に開催された森林保全活動へ参加したので、その内容を紹介します。

「JTの森 鯉が窪にいみ」とは

たばこ、医薬、加工食品事業を中心とした事業活動を行なっているJTグループは、葉たばこや紙、野菜など植物を中心とした自然由来の原材料を事業で利用しています。

このため、自然環境保全の一環として、森林保全活動を「JTの森」と称してすすめており、2022年11月現在は全国9か所で活動中です。

岡山県には「JTの森 鯉が窪にいみ」があり、鯉が窪湿原(こいがくぼしつげん)を中心とした森林保全活動を行なっています。

鯉が窪湿原
オグラセンノウなど、300種類を超える植物が自生する地域で、「鯉が窪湿性植物群落」として1980年3月6日に日本の天然記念物に指定されている。

「JTの森 鯉が窪にいみ」は、岡山県が推進する「企業との協働の森づくり事業」を活用し、2016年11月から約6年間にわたり新見市と協働で森林保全活動を行なっています

2016年からの1期目と、対象森林区域を変更した2022年からの2期目に分かれており、2022年秋の森林保全活動は2期目の第1回活動として実施されました

2022年秋の森林保全活動の内容

2022年秋の森林保全活動は、「鯉が窪湿原内遊歩道の整備活動」をメインに以下の流れで行われました。

  • 開会式
  • 森林保全活動(鯉が窪湿原内遊歩道の整備活動)
  • 木工教室と閉会式
  • 高性能林業機械およびチップ工場見学

1番・2番が午前、3番・4番が午後の活動です。

岡山県・広島県を中心としたJTグループの従業員・家族ならびに、新見市のかたを中心に約90名が参加し、4班に分かれて活動を行いました。

開会式

開会式ではまず、来賓のかたから以下の順番で挨拶がありました。

  • 新見市 副市長 野間哲人(のま てつと)さん
  • JT執行役員 小倉健資(おぐら けんじ)さん
  • 岡山県備中県民局 行森重人(ゆきもり しげと)さん
  • 新見市議会 議長 石田實(いしだ みのる)さん

続いて、岡山県二酸化炭素森林吸収評価認証書の交付式、記念植樹が行われ開会式は終了しました。

ここから、いよいよ森林保全活動がスタートです。

森林保全活動(鯉が窪湿原内遊歩道の整備活動)

開会式が行われた、鯉が窪湿原第2駐車場から4班に分かれ、新見市森林組合のかたに案内してもらって、鯉が窪湿原内に徒歩で移動します。

当初は肌寒いくらいの気温でしたが、移動するうちに汗ばんできました。

鯉が窪湿原に到着
鯉が窪湿原のなかを進んで行く
遊歩道
森林組合のかたから作業説明をうける

湿原内に到着すると、班ごとに決められたエリアで、遊歩道で邪魔になる支障枝の除伐を行います。

  • 剪定(せんてい)ばさみ
  • 刈込ばさみ
  • のこぎり
  • 高枝のこぎり

新見市森林組合のかたから、これらを使った除伐作業の方法を簡単に教えてもらい、いよいよスタートです。

枝などを切り落とすだけ

といわれたらそうなんですが、普段このような作業に慣れていないこともあり、30分も経つと腕が痛くなってしまいました。

今回は1時間程度の作業でしたが、普段から保全活動を行なっている、森林組合のかたがたに頭が下がります。

子どもは剪定ばさみで作業

子どもも何名か参加していましたが、「どれを切ったらいい?」、「うまく切れない!」など試行錯誤しながら作業をしていたようです。

終了後は、開会式が行われた第2駐車場に戻り、お弁当を食べました。

天候にも恵まれ、一仕事終えたあと青空のもとでいただくお弁当は、普段の何倍もおいしく感じます。

木工教室と閉会式

午後からは木工教室が行われました。

新見産のヒノキを使った工作用キットで「スマホスタンド」を作ります。

「新見の木づかいと木育の会 木の葉art」のかたから説明とサポートを受けながら、木を紙やすりで削り、絵や日付などを焼きペンで書き込みながら仕上げていました。

木工教室のようす
焼きペンで文字や絵をいれていく
完成した新見のヒノキを使ったスマホスタンド

大人も子どもも楽しく過ごし、約1時間の木工教室はあっという間に終了。

終了後は、閉会式が行われ「2022年秋の森林保全活動」は閉会となりました。

高性能林業機械およびチップ工場見学

最後に、参加者全員で「株式会社戸川木材」の木材チップ工場を見学しました。

間伐された木材は従来、森林に放置していることが多かったそうです。

しかし、戸川木材ではそれを木材チップに加工し、木質バイオマス発電事業者向けに「燃料チップ」を販売することで、樹皮など木材のほぼ100パーセントのリサイクルを実現しています。

大量の木材・樹皮が、轟音とともにあっという間に木材チップに加工されるようすはかなりの迫力。

間伐材を重機で運ぶ
あっという間に木材チップに

森林保全と聞くと、木を植える・生育を促すことを想像しがちですが、保全のために伐採(=間伐)することもあります。

そのような形で役割を終えた樹木を、有効活用することも考えられていることを知ることができました。

おわりに

筆者は今回の保全活動に、子ども2名を含む家族で参加しました。

子どもたちは、普段目にすることのない景色が見られたり、さまざまな体験ができたりで「楽しかった」と喜んでいました。

普段都市部に住んでいると、森林のこと、水のことを意識することは少ないでしょう。

しかし、今回保全活動を行なった遊歩道も、勝手にできあがったわけではありません。

整備したうえで、維持管理している人がいる

その人たちの働きで景観が楽しめたり、下流域で安定した水資源が得られたりすることを忘れてはいけないと感じました。

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